ひこくろ

裸足のギボンのひこくろのレビュー・感想・評価

裸足のギボン(2006年製作の映画)
3.5
障害者を扱ったコメディタッチの作品というのは、どうにも居心地悪くて苦手だ。
これはもうどうしようもないくらい個人的な感覚なんだと思う。
点数が低いのはそういう理由からで、作品の良し悪しとはあまり関係がありません。

全編、やさしさの塊のような映画だった。

心か子供のギボンは、40歳の見た目とは裏腹に、無邪気で快活だ。
裏表を使い分けることもなく、悪意を持つこともなく、純粋に毎日を生きている。
やさしく、真面目で、何をするのも全力。しかも、彼はやることすべてに楽しみを見出している。

そんな彼に対して、村人たちも、偏見や差別はありながらも、根っこのところでは温かく接している。
村のアピールのためにギボンを担ぎ上げた村長には、別の真意がある。
ギボンをマラソンに出すことに反対していた村人たちも、彼の楽しそうな姿に応援をはじめる。
写真館で働く女性は、ギボンの生き方を尊敬している。
ギボンをバカ扱いする村長の息子ミチャンも、じつはギボンに対して屈折した劣等感を抱いている。

そして何より、ギボンには愛する母親がいる。
口が悪く、学もないけれど、母親の愛情は絶対的で、二人の掛け合いのシーンはおかしいのに、観ていてとてもやさしい気持ちになってくる。

ギャグと言ってもいいくらい、かなり強めのコメディ色でもって、映画は彼らのやさしさを浮き彫りにしていく。
誰もギボンを否定していないし、誰もがギボンを大切に思っている。
そういうやさしさが溢れている。というか、ここにはやさしさだけがある。
観ているこちらまでやさしい気持ちになってくる、とても温かいいい映画だ。

笑えるし、泣けるし、感動もできる。
人に勧めたくなる映画だとも本音で思う。
ただ、僕が苦手だったというだけで。
ひこくろ

ひこくろ