みかんぼうや

秋立ちぬのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

秋立ちぬ(1960年製作の映画)
3.6
先日の「浮雲」で成瀬巳喜男作品デビューし、他作品も・・・となっていたところで、78分という時間的にちょうど観やすい作品だったこともあり本作をチョイス。

長野から母親と2人で東京に出てきた少年の話で、序盤は楽曲も含めてほのぼのとした“小津的”な雰囲気があり、田舎からきた子が東京の子どもたちと出会って都会に慣れていく温かい話かと思っていたら、話が進むにつれて、全然違う方向へ・・・

ネタバレになるので詳しくは書きませんが、結局のところ、大人の都合に振り回されまくる子どもたちの話。大人の身勝手な行動と子どもたちの何とも純粋な興味関心が対比的に描かれるが、それが交錯する中で、結局理不尽に耐え抜かねばならないのはやはり子どもたち。

特に主人公の秀男少年は、都会に慣れることだけでも大変なのに、そこに二重三重と辛い思いをすることになり、ただただ可哀そう(ただ、ポップな音楽や子どもたちの元気な演技もあり、言葉で書くほど“重い”作品ではないですが)。

「大人の不都合の狭間に立つ子どもの辛さ」と「世の中の理不尽な経験の中で自立していかねばならない子どもたち」がコアメッセージになるのかな?

作品を観終わった後、本作が成瀬巳喜男監督の幼少期の体験を反映した内容ということを知って、成瀬少年の当時の大人に対する怒りが込められていたのかなとも思った。と同時に、この監督が男と女の関係性を描いた作品が異様に多いことに、少年時代の視点では見えなかった“大人たちなりの事情”を描きたかったのだろうか、と妙に納得感を持った作品でした。
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