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ネアンデルタール人の秘密のワンコのレビュー・感想・評価

ネアンデルタール人の秘密(2024年製作の映画)
4.0
【アイデンティティ】

※Netflixドキュメンタリー

温故知新なんて言うが、ネアンデルタール人をもっと知ることによって、僕たち今の人類の立ち位置や、自分たちの世界の危うさも理解する手助けになるんじゃないかなんて思う。

ネアンデルタール人は、気候変動による乾燥化と氷河期の到来で数を激減させていたのだ。

そして、ホモサピエンスとわずかに交雑し、現世人類のDNAに2%から4%の痕跡を残すのみとなった。

「人類の起源」という本を読んでいたのだけれども、実に多くの発見や調査、分析がなされて人類の起源に関する情報は更にアップデートされてワクワクした。

この「ネアンデルタール人の秘密」も改めてネアンデルタール人への認識を新たにしてくれる。

弱者を見捨てず、障がい者とも暮らし、死者に花を供え、親しくしていた死者の肉を食べて死者とともにあろうとした可能性のある独特な宗教観も持っていたネアンデルタール人。

イラク北部のシャニダール遺跡の発掘が、イラン・クルド紛争に始まり、イラン・イラク戦争や、イラク戦争、イスラム国の紛争などホモ・サピエンスのDNAを色濃く残す現代人の紛争によって滞ったというのも何か皮肉のような気がするのは僕だけじゃないだろう。

食べられる植物の採取や、それを何らかの形で食事に取り入れていたこと、おそらくそれは女性の役割であっただろうこと。

偶然落石によって押しつぶされたことによって他の気候などの影響を受けず逆に良い保存状態だった粉々の頭蓋骨の気の遠くなるような復元から得られた知性の高い可能性。

そして、フランスの洞窟の中にある石筍片の幾何学的(?)な配列は美的センスもあって、世界最古の構造物とされる。何らかの意味があったことは間違いなく、松明を用いて洞窟の奥深く入り、何を考えていたのか、死者を敬う他に宗教的な意味があったんじゃないかと想像してしまう。

死者を埋葬する場所を特定のところに定め、生活・行動したであろうこともアイデンティティとなったんじゃないかと思う。

復元された顔は人間のお年寄りの顔とほとんど変わらないように思える。

ネアンデルタール人がほとんどいなくなった理由と思われるのは気候変動らしい。

だが、これは人為的なものではない。

今僕たちが直面する気候変動は僕たちが滅ぶ原因になることはないだろうか。
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