ワンコ

ありふれた教室のワンコのレビュー・感想・評価

ありふれた教室(2023年製作の映画)
5.0
【縮図/ありふれた危うい世界】

ドイツ国内で多くの映画賞を獲得しただけでなく、アメリカのアカデミー賞国際長編作品賞にもノミネートされた作品だ。

ドイツ語のオリジナル・タイトルの意味は「教員室」。

普段は、邦題タイトルを結構ディスることが多い気がするが、これは、”教室”は別として「ありふれた」としたところはよく考えられているなと思った。

テーマは、そう、”ありふれた”ような出来事で、そこから炙り出されるのは、分断や対立。

ただ、それは大きくカテゴリーされた特定のグループの間でだけ起きているのではなく、実は個人的な行き違いや、状況によって様々な心情などを背景により複雑化して形をを変える有機的なもので、学校では教員室から生徒の間にまで伝播し、教師や生徒、学校や家庭といったステレオタイプな構図では捉えきれないもの、更に、ネットや噂話で安易に矮小化された二項対立が先鋭化してリスクを大きくする可能性があることを示しているような気がする。

学校という狭い社会に置き換えて、更に大きな社会全体や世界の危うさを縮図として示唆した秀逸な作品だ。
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