ワンコ

ミッシングのワンコのレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
4.8
【失ったもの】

ドキュメンタリー映画「正義の行方」では、冤罪の可能性があるものの、既に死刑が執行された事案において、西日本新聞の報道が世論形成のみならず、捜査や司法の判断に何らかの影響を与えた可能性もドキュメンタリーとして描かれていた。

「ミッシング」では、似たようなメディアの無責任さを感じさせる場面もあるにはあるが、物語は、みうが”行方不明”になったことのみならず、僕たちの社会が、そして僕たち自身が”失ってしまったもの”を丁寧に描きたかったのではないかと思う。

衝動に依らず人として考えを尽くすこと。

石原さとみさんはじめ俳優陣の熱演で、ストーリーを通して、登場人物に対する感情移入が勝ってしまい、誰がダメだとか、警察が、捜査が、メディアの報道のあり方がどうだとか、ネチズン(ネット民)がおかしいとか、そうした感想が多く出てくるように思うが、実はそれはあまり意味がないような気がする。

そして、そのような感情移入の状況に陥りがちなことこそが、僕たちの危うさを示しているんじゃないのか。

行方不明や失踪ではなく、病気や事故でお子さんを亡くした夫婦関係がギクシャクしたり、離婚するようなことは多いと聞く。

ただ、こんな行方不明や失踪が特にSNSの中で親族の責任が面白おかしく追求されてギクシャクしたり破綻したりするのが半ば当たり前のようなところは世の中のおかしげなところじゃないのか。

それに、SNSに投稿しなくても似たような考えを持ちがちで噂話をしがちな人は存外に多いのではないのか。

こんな危うい社会で僕たちはどうやって生きていったら良いのか、正解はあるのか、日常からの心構えをどうしたら良いのだろうか。

たぶん、これといった良い答えはないように思う。

ただ、最後にそんなヒントや、夫婦の気づきの場面を盛り込むことによって希望も示そうとしているようにも思える作品だ。
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