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フォロウィング 25周年/HDレストア版のtanayukiのレビュー・感想・評価

4.0
先週1人で「クリストファー・ノーラン祭り」を決行したままレビューを書き忘れたので、思い出しながら書いてみる。

クリストファー・ノーランの長編デビュー作。といっても、上映時間は70分とコンパクトで、予算の都合でフィルム代を節約するために撮影は1テイクか、2テイクのみ(そのため入念にリハーサルした)。プロ用の照明機材も用意できなかったため、モノクロフィルムを使わざるを得なかったことで、ムダを削ぎ落としたソリッドなネオ・ノワール感がマシマシに。さらに、ノーランお得意の、時間軸を意図的にズラした編集が、見るものに不安を与え、同時に頭をフル回転させて真相に迫りたいという欲求を刺激する。それは苦行であるよりもまず、没入感をもたらす効果がある。ノーランいわく、

「このジャンルの魅力的な物語では、様々な登場人物の関係に対する評価を再考するよう絶えず求められる。私は、最初に提示される新しいシーンごとに、観客の理解が不完全であることを強調するように物語を構成することにした」
https://en.wikipedia.org/wiki/Following

「フォロウィング」は自称・作家の卵のビルがネタ探しのためにはじめた「追跡」や「尾行」のことで、当初は特定の相手をターゲットにしたストーカー行為とは違い、見ず知らずの他人を追いかけては、みずからの好奇心を満足させるためだけの、ちょっと気味は悪いが他愛のない行為だった。が、パリッとしたスーツに身を包んだある男に興味をもったことが運の尽きで、その男=コブは、ビルの尾行を見破ったばかりか、みずから窃盗犯だと名乗って、ビルを仲間に誘う。ところが、不法侵入したアパートの一室で、コブは何を盗るわけでもなく、住人の私物をあさり、自分が侵入した証拠をわざわざ残す、という奇妙な行為に出る。他人の秘密を暴くのが趣味だというのだ。それはまさにビルがしていたことであり、ビルは次第にコブの魅力に惹かれ、彼のスタイルを真似るようになる。窃盗のしかたから服の趣味、髪型、さらにはコブから渡されたクレジットカードで詐欺を働くところまで……。

ビルは不法侵入したアパートの住民のブロンド女にも興味をもち、「尾行」をはじめ、やがて一線を越えて彼女と関係をもってしまう。彼女はギャングのボスの元愛人であり、いまだに写真をネタに強請られていて、離れなれないと打ち明ける。コブの指南のおかげで腕を上げたビルは、彼女のためにギャングの金庫に押し入り、写真と現金を奪って逃げた際、正体不明の男に捕まりそうになって、その男をハンマーで殴り倒してしまう。

登場人物はほぼビルとコブとブロンド女の3人だけで、この3者が互いを観察し合い(following)、化かし合うというストーリーなので、あとは見てのお楽しみ。二重、三重のどんでん返しが、のちの『メメント』や『インセプション』を彷彿とさせる。デビュー作にしてこのクオリティは、さすがノーランとうならされた。

△2024/04/17 TOHOシネマズシャンテで鑑賞。スコア4.0
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