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REBEL MOON ー パート2: 傷跡を刻む者のtanayukiのレビュー・感想・評価

3.5
宇宙を統べる悪の帝国に反乱軍が(一時的に)勝利したら、次はやっぱり「帝国の逆襲」だよねと思わせといて、3部作をつくる金がないから「ジェダイの帰還」まで一気に見せちゃいましょう的な、安易な感じに苦笑を禁じ得ない😎

ストーリーラインは相変わらず「七人の侍」だし、臆面もなくライトセーバーも出てくるしで、ホント、笑うしかないのだけど、ここでふと考えた。世界中に伝わる神話や伝承を分析して、人口に膾炙する王道のストーリーラインを抽出し、シナリオライティングに生かすやり方も最初の頃はよかったかもしれないが、こうも似たような話ばかり見せられると、正直飽きる。それはまさにマーケティング大国ディズニーが陥った罠で、最近のディズニー作品におもしろいのってないんじゃない? と思うのは自分だけだろうか。

過去のデータから傾向を読み取り、その分析をもとに次の手を考えるというのは戦略策定の基本だが、そうしたやり方が一般化すると、その手は相手に読まれて、目論見通りの成果は得られなくなる。そんなことは相手もとっくに「織り込み済み」であって、そういう相手を出し抜くには、さらに別の手を編み出さなければならない。つまり、過去のデータを静的に分析するだけではダメで、相手との関わりの中で、動的にアップデートしていく不断の努力が欠かせない。そう書くと、たいへんだと思う人がいるかもしれないけど、こんなことは、誰でも日常会話で当たり前にやっていることにすぎない。相手の出方を読み、それに応じて打ち手をくり出すのって、ふだんの会話そのものだよね。

顔の見えない「不特定多数」を相手にすると、相手が一定不変の存在と勘違いしてしまう愚を犯しがちだけど、特定の誰か、具体的な「個」を想定すれば、そういう単純なミスは起きにくい。こっちが相手の行動を予測して打ち手をくり出すように、相手もこちらの出方を読んで次ぐの行動を考える。相手にすでに「織り込まれた」作戦を、あたかもどんなシチュエーションでも通用する魔法の手だと思い込むことほど、みっともないことはない。どんなときも誰に対しても通用するような万能薬など存在しないのだから。

既視感や二番煎じというのはエンタメの世界ではかなりの致命傷で、そこには新鮮な驚きもなければ、次はどうなるのだろうというワクワク感もない(寅さんやアンパンマンのような、決まりきったパターンが好きな人もいると思うけど、自分はそうではないのです)。「仕事は驚きと感動だ」というのをわりと本気で信じている自分にとっては、「映像はきれいでよかったね」「誰々の演技はよかったね」という感想は、明らかに消化不良なのを自分なりに折り合いをつけるための言い訳で、やっぱり見るからには驚きたいし、感動したい。だから、どこかで見たような作品はどうしても辛口の評価になってしまうのだ。ごめんね。

△2024/05/03 ネトフリ鑑賞。スコア3.5
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