アイウ

正義の行方のアイウのレビュー・感想・評価

正義の行方(2024年製作の映画)
4.2
かなり興奮しながら観た。
こんなに面白いドキュメンタリーはなかなかないと思う。

警察側も、新聞側も、弁護側も、みんな「正義」に則っている。
ただその「正義」を大義名分にした時の暴力が最も恐ろしいように、
感情で勢いづいた制裁は恐ろしい。
最後まで一貫して犯行を否認したまま死刑確定後2年で死刑執行。
死刑囚がクロかシロかの問題は別として、これは暴力でしょう。

様々な人のインタビューで話を組み上げていくその技巧がすごい。
これは監督が今までテレビドキュメンタリーで鍛えて磨き上げてきた技術なんだろうなと思った。

構成が素晴らしい。
そしてクロかシロかを勝手に結論づけずに最後までいくところが良い。

警察側のインタビュー、よくここまで皆さんしっかり顔出し名前出しして本音をたくさん話してくれたなぁ。
この取材力は凄すぎる。
NHKだからみんな出てくれたんだろうなとは思うけど、それにしてもここまで協力的なのは凄い。

少し飯塚事件についてネットで検索するとすぐに犯人がクロかシロかの素人の勝手な主張に出くわすけれど、クロかシロかは我々が勝手に外から憶測で決めることではない。推理ドラマじゃないんだ。
こういう大衆の浅い推理行為、正義を振りかざした決めつけが、今回の暴走を引き起こした原因そのものであり、罪深いものだということに気付くべき。

2ヶ月ほど前に映画ではまだ出てきてない重要なことが明らかになってて、これは…。
誘拐現場を決定づけた目撃証言、その目撃者が、そもそもそんな証言はしていないと主張しているという内容。
全ての前提が覆るので映画観た方は調べてほしい。

この事件で抜け落ちた「疑わしきは罰せず」「推定無罪」という原則。
この原則を深く考えさせられる映画。
司法、死刑について改めて考える。
アイウ

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