櫻子の勝手にシネマ

ピアノ・レッスン 4Kデジタルリマスターの櫻子の勝手にシネマのレビュー・感想・評価

5.0
4Kデジタルリマスター版が公開中とあったので、東京から横浜まで観に行ってきた。

私が幼い頃、母がよくピアノレッスンの曲を弾いていたこともあり、当時はまだ映画は観たことがなかったが音楽はよく聴いていた。
マイケル・ナイマンによる、秘めた情熱が香り立つ哀切なピアノ曲『楽しみを希う心』。
大人になってからは、自らも弾くお気に入りの1曲になっている。

1993年、ジェーン・カンピオン監督作品。
彼女は本作で初の女性監督初のパルム・ドール受賞を成し遂げた。

既に10回以上は観ている本作。
映画館で観るのは初めてだったが、
やはりこの映画は名作だと改めて思った。

物語の舞台は19世紀半ばのスコットランド。
主人公のエイダ(ホリー・ハンター)は、6歳の時に言葉を発することをやめたというナレーションから映画は幕を開ける。
そんな彼女の唯一の感情表現方法はピアノを奏でること。

大人になったエイダは娘のフロラ(アンナ・パキン)と共にニュージーランドの入植者スチュアート(サム・ニール)の元に嫁ぐことになり、ピアノと共に荒れる海の中ニュージーランドの海岸に辿り着く。
しかし、荒れる天候のせいで船乗り達は帰ってしまい、迎えが来るまで浜辺で娘と野営することになったエイダ。

やがて、夫となるスチュアートが通訳でもある地元の地主ベインズ(ハーヴェイ・カイテル)と共に迎えにやって来るが、住居までは森を抜けなければならず、エイダの大切なピアノは海岸に置き去りにされる…

激しいストーリーとは反対に、落ち着いた淡いブルーの色彩映像と美しい音楽が素晴らしい。
エイダの激しい恋心をピアノで表現するホリー・ハンターの演技力は流石の一言。

指を失くしたエイダに、義指を作ってくれたベインズ。
その義指を使って、またピアノを弾くことができるようになった彼女の愛と喜びが、美しいピアノの旋律と共に伝わってくる。

映画のサントラでもあるマイケル・ナイマンのアルバムもオススメ。
どれも美しい曲が20曲収録されている。
個人的には18曲目の『すべて不完全なるもの』がお気に入り。