工藤蘭丸

神の道化師、フランチェスコ デジタル・リマスター版の工藤蘭丸のレビュー・感想・評価

3.8
ネオレアリズモの巨匠として知られるロベルト・ロッセリーニ監督の1950年の作品ですね。

ロッセリーニの監督作品というと、なかなか劇場で観る機会はなくて、若い頃に自主上映で行われた『無防備都市』と『戦火のかなた』を観に行って以来かな。ちなみに、その時はフィルムが相当傷んでいて雨が降っているような感じだったし、『戦火のかなた』の上映中には、フィルムが途中で焼き切れて中断するというアクシデントもあったものでした。それを思うと、今はデジタルで修復されて、きれいな映像で観られるようになったのは幸せですね。

本作は中世のイタリアにフランチェスコ修道会を設立した聖フランチェスコと、その弟子たちの行動をユーモラスに描いた作品ですね。私は最近、高校の世界史を勉強していたので時代背景も分かるんだけど、「教皇は太陽、皇帝は月」と豪語して教皇権の絶頂だったインノケンティウス3世の時代。そんな世俗的な教会への批判から生まれたのが、私有財産を持たずに清貧を旨とする托鉢修道院だったわけですね。

ちなみに、ほぼ同時代にフランスで創設された托鉢修道院がドミニコ会で、私はそのドミニコ幼稚園の出身なので、自己犠牲を伴うキリスト教の精神については、幼少の頃から叩き込まれて来たものでした。でも、なかなかキリストの教えに忠実に生きるというのは難しいもので、それを身をもって実践したのがフランチェスコだったのかな。

当時は不勉強でよく知らなかったけど、私が高校生の時に観たフランコ・ゼフィレッリ監督の『ブラザー・サン、シスター・ムーン』もフランチェスコの伝記映画だったようで、あれにはローマ教皇すらも彼らには一目置いているというシーンが出てきて、感動させられたものでしたね。

フランチェスコは英語だとフランシスコで、アメリカのサンフランシスコは、聖フランチェスコに由来する地名だったことにも気づき、あらためてすごい人だったんだなと思いました。

でも、フランチェスコの死後のフランチェスコ修道会はあまり褒められたものでもなく、プロテスタントが生まれた宗教改革の時代には、カトリック教会の手先になって異端審問や魔女狩りなどを率先して行うようになっていったわけで、もしフランチェスコが生きていれば、さぞかし嘆いたろうなあと思いますね。