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宗方姉妹 デジタルリマスター版のsayuriasamaのレビュー・感想・評価

3.8
姉妹とは、夫婦とは、命とは。人生の痛みに耐える姉と自由過ぎる妹と「新しいもの」

東京国際映画祭旧作企画。一本くらい小津安二郎作品を映画館で観るかぁということで、高峰秀子&田中絹代の顔合わせ顔合わせ作品を。

小津安二郎作品は、なんとなく筋書きがいつも似通っていて、その中でどうやって常連キャスト陣が配置され、ゲストキャストがフォーカスされるのかといういうように見えてしまう。それでも各作品ごとに違いはあるし、つまらないとまでは言わないが、ドラマにある種の「無常」のムードが常に含まれていて、これの漂わせ方で好みの順位が付きそうな気がする。

今回の『宗方姉妹』は望まない結婚をした姉:田中絹代と、自由奔放な妹:高峰秀子、姉の夫:山村聰,姉のかつての恋人:上原謙の織りなす愛と家と自分の人生について、そこに姉妹の父:笠智衆の余命問題が横たわる。

古いしきたりにしがみつこうとしてもがき、そして結果苦しむ姉と、舌をぺろっと出すクセのある、オテンバでまっすぐな妹。この二人の対比と、振り回される男二人が面白い。比較的ユーモアあふれるシーンもあって、場内は結構笑いがおきていた。

スクリーンで観る楽しみとしては、スタンダードサイズに収まる構図が細部に渡って美しく、モノクロのお陰でよりストーリーに入り込みやすい。姉妹が並んで座って食べ物をほおばるシーン、妹と父が縁側でうぐいすを見つめるシーンには日本的な静かなる美しさを強く感じた。

…だが、舞台設定として、京都行ったり神戸いったり東京行ったり…お手軽な新幹線も飛行機もある現代とは違って、移動に時間と手間はかかるので、そこは少し気になった。まあ、具体的な地名は雰囲気やイメージを引き出すためのキーでしかない気もする。京都が古い都で、神戸が新しいっていうのは、トーキョー人の考えそうなイメージですな。(間違ってはないけどそんな単純じゃないような…)

個人的には千石規子演じる飲み屋の女将はさっぱりしていて行きつけにしたくなる感じ。ファン多そうだなあ。


また、映画祭オリジナル企画として「ヴィム・ヴェンダース監督が語る小津安二郎」の短い動画付。このインタビューは"perfect days"を観るにあたって参考になったように思う。
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