ボブおじさん

ザ・カップ 夢のアンテナのボブおじさんのレビュー・感想・評価

ザ・カップ 夢のアンテナ(1999年製作の映画)
3.5
日本代表決勝トーナメント進出を記念してサッカー関連映画をもう1本。これを見れば当たり前にワールドカップの試合が見れる事の幸せを感じられるかも。

本国ブータンでは誰もがしっている、チベット仏教の高僧、ケンツェ・ノルブが監督を担当。出演者も実際の修行僧たち。実話に基づき、ワールド・カップに熱を上げた若き修行僧たちの姿を生き生きと描く。

ストーリーは実にシンプルだ。舞台は北インドの山間にある亡命チベット人の僧院。少年僧たちは、僧院を抜け出してワールド・カップの中継を見に行ったことがバレて先生に一喝される。

しかし、彼らはそれでもフランスとブラジルの決勝戦が見たくて、ふもとのインド商人からテレビと受信アンテナを借りるために皆んなから金を集める。

世界最大のスポーツイベントであるサッカーワールドカップのテレビ視聴者数は、夏季オリンピックの5倍以上と言われている。世界中のサッカーファンや少年・少女たちが画面に釘付けになる。チベットの少年僧だって見たいに決まっている(^^)。

映画やテレビでチベット僧が取り上げられるとき、そこに描かれるのは、欲にまみれた俗世界から抜け出した聖人としての姿であることが多い。特に欧米の映画では、一個人の内面など持たない集団として扱われることがほとんどだろう。

ところがこの映画では、一人一人が心を持った少年や若者として描かれている。彼らは私たちが勝手に思い描いているチベット僧のイメージをいい意味で裏切ってくれる。

だがこの映画は、単にもの珍しい世界を垣間見せてくれる話では終わらない。なんとかして決勝戦を見たいと願う主人公の少年僧の願いが叶いそうになるその瞬間、彼はふと大事なことに気づく。

映画を総合芸術として捉えるならば、欠点の散見されるこの映画はいい映画ではないかもしれない。だがいい話を見たいのであればこの映画をお勧めする。

最後に高僧が少年僧にかける言葉に胸が熱くなる。