回想シーンでご飯3杯いける

アメリカン・フィクションの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
3.8
黒人のステレオタイプな描写ばかりがウケてしまう小説や映画業界をブラックユーモアたっぷりに描いた作品。

とは言っても、作品の感触自体はさほど毒々しい感じではなく、インテリ系の黒人文学教授が学内の問題行動によって謹慎となり、実家に帰るところから物語は始まる。そこにいるのは、最近認知症が進行し始めた母親。「実家に帰ったら親が〇〇になってました」というプロットは、日本の映画でも非常に多く見られるが、アメリアでも事情は同じらしい。

日本でコメディと言うと、爆笑、頭空っぽ等のフレーズで語られがちだが、その辺りは国毎で趣が異なる。本作で感じるのは、ノア・バームバック監督作品にも通じる家族ドラマをベースにしながら、観客の中でジワジワと皮肉が増幅する構図である。

海外ではアカデミー脚色賞を始め多数の賞を獲得しているが、日本ではamazonプライムでの配信のみ。別に劇場至上主義を唱えたいわけでは無いが、日本の劇場で公開が決まる作品の幅が目に見えて狭くなってきている昨今の状況は残念でならない。