アキラナウェイ

ミシシッピー・バーニングのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

ミシシッピー・バーニング(1988年製作の映画)
4.0
同じパイプを伝う水が途中で枝分かれして、「WHITE」専用と「COLORED」専用の水飲み場に分かれている様子を映し出すアバンタイトル。

同じ水なのに。
こんなのっておかしいと思うけど、たった56年前の現実。

アメリカ南部の黒人差別がかなり厳しい事は知っていたけど、改めて映像として観ると、かなりキツイ。ミシシッピー、ヤバい。

1964年。ミシシッピ州フィラデルフィアで3人の公民権活動家が行方不明になる事件が発生。FBI捜査官ウォード(ウィレム・デフォー)とアンダーソン(ジーン・ハックマン)が、捜査の為に田舎町に派遣される。しかし、黒人差別が根強く残るこの町で、彼らは地元の保安官やKKK等から執拗な捜査の妨害を受ける。

昔はジーン・ハックマンの魅力に気付いていなくて、この時代の出演作はことごとくスルーしていたなぁ。髪も後退しているし、チリチリなんだけど、程良いバランスで強さと優しさを醸し出す。

そして、ウィレム・デフォーが若い!!毒っ気がない。若さ故か、顔面の圧も弱め。

この映画、単にFBIと地元保安官やKKKとの対比だけを描いている訳じゃない。

デフォー演じるウォードは北東部出身のエリート、ハックマン演じるアンダーソンは南部出身の保安官上り。FBI捜査官にも見られる、この出自の違いがドラマを面白くさせている。

差別に対して徹底的に抗戦しようとするウォードと、地元民の理解を得ながら、地道な聞き取り捜査を続けるアンダーソン。ウォードの捜査方法は地元民の反感を買い、黒人達も報復を恐れて口を閉ざすばかり。

FBIに話しかけられたという理由だけで、リンチを受けるんだもの。

そりゃ黒人達の口も重くなるよ…。

ましてや、町の保安官ですら、白人至上主義のレイシストばかり。闇討ちで家に火を放たれるわ、拉致られて首吊りさせられるわ、黒人の人達には生き地獄。裁判官ですら、白人の肩を持つ。

この町に味方はいない!!
この町に正義はないッ!!

フランシス・マクドーマンド演じる保安官補の妻の独白が印象的。

この町が醜くて嫌になる。
物心ついた時には人種差別を教えられ、
7歳になれば、もう憎んでいる。
それでも、この町で結婚し、この町で生きていくしかない。

この閉塞感。
息が詰まりそうだ。
それでも彼らはここで生まれ、ここで死ぬしかない。

脇役だけど、めっちゃ悪役顔のブラッド・ドゥーリフや、プルイット・テイラー・ヴィンス(1990年代頃から眼球振盪を患い、演技中も目が自然にカタカタと動く)は、X-ファイルで観た事のある方々で、個人的にテンションが上がる!

タイトルが示すのは、何度も火を放たれて燃えていく黒人達の家屋の事でもあり、同時に、彼らの心に燻っていた火種が燃え上がり、社会から人種差別をなくそうとする灯火の事でもある。

それでも、アジア人を見て、「コロナ」と指差す人は今この時代にも生きている。

人間とは差別をする生き物なんだという事を先ず学ばねば。