オンライン試写会で鑑賞
ベラルーシを経由してポーランドへ亡命しようとするシリア難民の家族。しかし、ポーランドの国境警備隊に見つかりベラルーシに送り戻されてしまう。だが、ベラルーシの国境警備隊はポーランドへ送りその繰り返しが行われる。それを軸にポーランドの国境警備隊の男性、亡命を手助けする活動家の若者たち、一人の難民を助けた女性と群像劇として見せていく。
こんなにも息の詰まる映画があるのか…。人間ピンホールのようにポーランドに送られベラルーシに送り返される。そんな終わらない問題が映される。
フィクションのはずなのにドキュメンタリーのように見えてくる。でもこれはほとんど実話なのだから…。
沼地にはまり死んでいく少年。助けられなかった女性が泣き叫び、どうしようもない悲劇の連続。その中で自分はどうすればいいのかと問い詰められる。
世界を映した映画。最後はウクライナ情勢も出てくるが、なぜウクライナ難民をポーランドは受け入れ中東難民は受け入れないのか…。そんな矛盾を浮き彫りにし映画は終わる。しかし、これは未だに現実で続いている問題だ。それをただの情報としてだけ入れてしまうのは良くないと思う。大切なのは知ること、そしてその上で他人事だと思わずに考えること。その機会を得ただけでもこの映画の意義はあったと思う。
この映画はベラルーシ政府に存在を悟られないように14日間で撮影したそうだが、それはロベルト・ロッセリーニが政府にバレないように撮った『無防備都市』に似ている。またそんな世界がやってきたのだと思った。
