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悪は存在しないのsinginggizmoのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.0
スターも出ていないし全体に地味なのに、なぜかスリリングで、飽きる事なく作品に引き込まれた。
割と田舎暮らしの営みや風景は好きなので、森を下から見上げた目線のカメラワークで木の枝がひたすら映るオープニングや、主人公がただ薪割りしてるシーンや水汲みして運ぶシーンとかも、とても良かった。

このタイトルで悪が存在しない訳がないと思い、「誰を、何を悪として描いているのか」「悪をどう解釈しているのか」…という目線で物語を追いかける。
長野県、水挽町の地元の人達と、グランピング施設建設を計画している芸能事務所のスタッフとの説明会の様子は妙にリアルで緊張感があった。
こういうギスギスした空気、苦手なやつだーとどきどきしながら見守る。
説明会を開いた芸能事務所のスタッフ男女2名が悪か?と思いきや、彼らの上司である社長と企画立案したコンサルの奴、というさらに上流の人達が登場し、コイツらがまた分かりやすくいけすかない。
どちらもステレオタイプに嫌な奴ら。個人的にはコンサル男が1番嫌いだったけど(笑)
「僕は現地に行く必要ないですよね」って、すかしてんじゃないよ。
お前さん達が現地に説明に行きなさいよと…。

ここで、説明会にきたスタッフ高橋と薫はやりたくもない無理な計画を押し付けられているのだとわかる。
なんなら、地元の人達と上司達の板挟みで1番不憫にも思えるし、こういう立場の人の方が世の中には多いのでは?
自分は結果的にこの2人に1番感情移入した。
だから、再び水挽町に向かう車内での2人の一見普通の会話がとても面白かった。
しかし、高橋の悪気のない流されやすさ、調子の良さには羞恥心と苛立ちを感じる。
巧と高橋、薫の3人での蕎麦屋のシーンで、高橋は水挽町にグランピング施設の管理人として移住したいという、さっき思いついたばかりの想いをこれ見よがしに巧に語る。
恥ずかしいからやめてー…と見てられない気持ちになった。
いや、全然悪い人ではないんだけどね…。

主人公の巧は、芸能事務所側にも歩み寄るような言動を見せながらも、腹の中が読めない不穏な空気を常に纏っている。
感情を抑えつつも、ほんとうは、グランピング計画に歩み寄る気もなかったし、全部嫌いだったんだろうなー…と、衝撃のラストを観て思った。

K2シネマさんに初めて行ったけど、勝手がわからなすぎて、ちょっと挙動不審になってもーた(笑)
開場前に飲んだコーヒーがめちゃ美味しかった。
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