カイザーソゼ

悪は存在しないのカイザーソゼのネタバレレビュー・内容・結末

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

スーパー秀逸。わかりやすく、問いを、美しく投げてもらった気持ち。
映像作品としても良いショットがたくさん。

初っ端から石橋英子・ジムオルークの曲が美しく、不穏さを絶妙に作ってくる。シーンの一つ一つが美しく素晴らしい映像・音楽作品とも言える。
106分の割にロングショットが多く、当然多弁な作品でもないので、話の進行は緩やか。(それが急に最後ジャンプしていくのでよりびっくりする)
グランピングの説明会があり、住人から反対され、相談MTGをして、再度コミュニケーションを主人公のところにとりにいき、薪割って、うどん食って、水汲んだら、娘が行方不明になりクライマックス。マジかよ!でも、その緩急が面白いんですよね。ここまで極端で良いのかなと思わされる。

上流と下流の話。上流がやったことは必ず下流に影響する。だからこそ、上流はそれを受け止めて振る舞う責務がある。
上流と下流、人間と自然(鹿)の対立。
主人公の巧もまた、グランピング事業・都会に対する鹿であったように思う。
都合の良い共存・共栄は存在せず。
また、落とし所すら作らせない。
その断絶と意思にぞくっとしたラストでした。
生ぬるい善でも悪でもない無知や鈍感さはいたるところにある。それが様々なものを蝕んでいく。

追記:
この話をみて、まさに映画の舞台になった八ヶ岳に関わることになった経営者と、北海道は道東に居を構えながら狩猟・釣りにも勤しんでいる経営者のことを思い出した。
彼らがどっち側かもわからないし、それはどっちでもいいのだが、間違いなく最初は異物だったわけで、そこから数年単位でどういう存在になっていくのか、それによって周囲がどう変わっていくのか、そういう目線で眺めてみたいとも思うのであった。

なお、GWで、ル・シネマはすっかり超満員かと思いきや空席もあってなんでだよ!という気持ち。みんなこんなの必須教材だろ!