ひ

悪は存在しないのひのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.8
心、自然のバランス

・のっぺりとした台詞回し(ドライブマイカーをめっちゃ思い出した)
・時間がゆっくりすぎていくように感じられるような長回しと引きで撮る大自然
・ぶつ切りの音楽とシーンの切り替わり
子供の頃、没入しながら読書していた時のような感覚で物語に集中できながらも、すごく客観的に物事を見れるような作りだなと思った
一つ一つのセリフとその切り返しはリアルで特に車の中での2人の会話は群を抜いて素敵だった


映画が終わって考えたくなってしまう要素が本当にたくさんあって
・この物語に明確な「悪」は存在しない、でも節々にその人だからこそ、その境遇だからこそ感じてしまう悪が存在してしまっている
・物語内のバランス、外側の演出としてのバランス感
→正しいとも間違いとも言えない施設工事計画、奇妙にも感じる音楽の使い方、説明会時以外での各キャラの心情や境遇、上と下etc.


行き場をなくした鹿はどこか別の場所に行くんですよ、と安易に口にしてしまった後
主人公が影で真っ暗になりながらタバコを吸うシーン。
・主人公としては、やっぱりわかりあうことはできないと諦めの感情が出始めてきた「悪」が存在してしまったシーン
・一方で、女性を気遣って(車でのシーンからの伏線で)そっと窓を開けてあげるという、そこに悪は存在しないというシーンであって、、、

こういう絶妙なバランスが最後の最後に崩れてしまう、、、、
この物語はこのタイミングで崩れていくことになるけど、この一連の事件がなくともどこかのタイミングで「下」にいる誰かにとってのバランスが崩れるかもしれないし、、、


最後までこの物語における花ちゃんはどういう役割を担っているかが全くわからなかったからモヤっとポイントになるかと思ったけど、「この物語」のバランスの天秤の中心にいた人物なのかもしれないな、、

いろんな解釈をレビューからも一緒に見にいった友達からも吸収してもっといい映画体験にしたい
ひ