楽太郎

ほかげの楽太郎のネタバレレビュー・内容・結末

ほかげ(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

「ほかげ」って一体何なんだろうって思いながら観てました。
終戦後の日本が舞台。まだ電気も水道もまともに戻っていない夏。居酒屋で売春をして生計をたてている女(趣里)と戦争孤児(塚尾桜雅)の交流。そこに現れた復員兵が灯した火によって出来た影が「火影」でした。
映画のなかでこの3人がまるで家族のようになる瞬間が訪れますが、しかし復員兵の闇(PTSD)がその「灯り」を消し去ってしまいます。
とても残酷な一瞬。戦争のむごさをこのように描くとはさすがだなと思いました。
映画は2部構成になっていて、後半は再び一人になった戦争孤児がテキ屋の男(森山未來)と旅に出るエピソードが描かれます。
屋内の暗い居酒屋から解放感あふれる野外ロケとなり楽しい気分になりますが、やはりここでも戦争の闇が影を落とす。男はかつての上官への復讐のため、ピストルを持っている戦争孤児を利用するのです。
子供の目に戦争のむごさを端的に見せていて、やはりこちらもうまいなと思いました。
最後はたくましく生きようとする孤児の姿を描き、希望も感じさせてくれました。塚本晋也監督の近作の中ではベスト級の作品だったと思います。
楽太郎

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