カタパルトスープレックス

ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワーのカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

3.5
ニナ・メンケス監督によるハリウッドのジェンダー差別の仕組み解説。TEDトークの劇場版の趣き。

すごく納得できることがたくさんあった。映画における性差別、職場における性差別、レイプ被害は全てつながっているという主張。映画表現で中心にあるのが「男性の目線」と「女性のモノ化」であり、それを補強する画角の作り方や証明の当て方。これらの要素がメッセージとなり社会に影響する。

男が男らしく、女が女らしくあるのが悪いわけではない。ステレオタイプをハリウッドが一般化、固定化するのが悪い。

確かに指摘されている部分は不要なシーンだと感じることが多かった。ボク自身は男なので「男性の目線」と「女性のモノ化」は自分の中にあると思う。そんな男性でも「そのシーン必要?」と思ったし、不快だとも感じた。その不快感の元が何なのかが理解できたのは大きな収穫でした。

なぜ不快に思ったかも分かったのですが、逆になぜ『燃ゆる女の肖像』のあのシーンがスゴイと思ったのかも理解できた。一方で『パリ・テキサス』のあのシーンはあれでいいんじゃないの?と思う。だって、ナスターシャ・キンスキーはそういう役なのだから。あれが男のような陰影のある照明だとダメでしょ。

ノスタルジーは危険だというのも納得できる意見でした。ボクは映画作品は経年劣化すると思ってます。映画は当時の世情を現したものだから。世の中が変われば、受け取り手も変わる。ジェンダーの考え方も今と当時は違う。当時は名作でも、今のなってはつまらない作品なんていっぱいあります。名作と言われてるから無批判に全部受け入れる……と自分はならない。

という感じに本作のメッセージにはとても共感できました。でも、映画作品としては凡庸だと感じてしまった。それ、TEDトークでよくね?と。