七色星団

ザ・クリエイター/創造者の七色星団のレビュー・感想・評価

ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)
3.6
やったぜ、へんてこ・ジャパン!
すんません。茶化しちゃったけどホント思ってた以上に面白かった。

実は公開前のトレーラーを観た時、”こうなりそう”って頭に浮かんだストーリー展開の選択肢が幾つかあって、その想定から1mmもズレずにエンディングまで行ったんだけど、満足感は高かったし、最後にはウルッとさせられた。

本作はSF作品というより、僕らにも人事でない現実の延長線上の未来と感じさせる。監督ギャレス・エドワーズの前作『ローグ・ワン/スターウォーズ・ストーリー』の時は戦闘描写がベトナム戦争を想起させ、スターウォーズの作品世界にも関わらず戦闘のリアルさに仰天した。
それに加えて本作には戦闘に翻弄され蹂躙される市井の人々の姿も描いており、現実にもウクライナ侵攻やパレスチナとイスラエル情勢を見て、一旦始まってしまえば正義だとか”筋”だとかの在り処を見失ってしまう戦争の本質をリアルに知ってしまった僕らにとって、画面で起こってることは他人事には思えない訳で。

また、あらゆるコンテンツで散々擦られまくってる”暴走したコンピューターを止めるため奔走する人間”という構造の物語から一歩先に進んだストーリーなのが良き。
人間のように考え、人間のように感じる限りなく進歩したAIは果たして何なのか?それはもう外観や成り立ちに関係なく人間と言って良いのでは?問題。
AIだって、作られた生命だって”オフ”になるのは人間と同様に悲しいやん。
”オフ”になる前には残される者のことを思うと苦しいやん。
そんな風に描かれたAIロボ達に哀しさ、憐れみさえ感じたのも正直なところで、ここも良かった。

これらがあって、本作を荒唐無稽なフィクションというだけでなく、一歩踏み込んだリアリティラインを持った作品として楽しめたんだと思う。

そしてこのリアリティがあるからこそ、ジョシュアとアルフィーに遠慮無く感情移入出来るってもんでね。
徐々に人間を理解し、人間らしくなるAIのアルフィーを演じるマデリン・ユナ・ヴォイルズに泣かされたんだもん。

オリジナル作品として思いっきり振りかぶってぶん投げてるギャレス・エドワーズの力量は十分だし、迫力のある映像と相まって、”人間とは?”を問い掛け、人間とAIに囚われない愛の物語として多くの人が観て楽しめる訴求力もあると思う。

最近は伏線だの考察だのを全面的に押し出した作品も多く、それが小難しくて面倒くさいと感じる層もいる筈。でも本作は普通に最後までストーリーを追うだけで作品の楽しさは十分満喫出来ることは間違いないので、是非多くの人に観てもらってヒットして欲しいなぁ。

最後に。
ハンス・ジマーの劇伴が良かったです。アジアンテイストが前面に出たサウンドで、彼本来のジャジャジャーン(語彙力😅)な音は抑えめにして融合◎
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