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黄色い繭の殻の中のrebのレビュー・感想・評価

黄色い繭の殻の中(2023年製作の映画)
3.1
カンヌ監督週間in Tokioで鑑賞。
事故死した義理の姉の遺体を、サイゴンから幼い甥とともに故郷の村へ送り届けたティエンは、何年も前に失踪した兄を探す。
サイゴンという都市の猥雑さの中で気ままな暮らしをしていた青年が、時間がゆったりと流れる美しく神秘的な自然の中で、自身の魂の在り方を探す旅に彷徨い込み、現実と夢の世界が曖昧になってゆく。
本作でカンヌ、カメラドールを受賞したのは、これが初長編となるベトナム出身のファム・ティエン・アン監督。
脚本の中で占めるアイデアは、全て“聖なる呼び声“によるもので、その声は人々の心の中に常にあり続け、人をしかるべき方向へと導くと語っている監督。
とても静謐な映画なのだが、音の使い方が印象的だった。サイゴンの雑踏、鳥の囀り、ニワトリの鳴き声、赤ん坊の泣き声、水音。
常に生命力に溢れた生き物の音が聞こえていながら、過去と現在の境目すらわからない霧に包まれた幻想的な自然の姿は、死というものを色濃く感じさせる。
白昼夢を見たような178分だった。
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