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トランスフュージョンのrebのレビュー・感想・評価

トランスフュージョン(2023年製作の映画)
3.5
最愛の妻に先立たれた元特殊部隊員が、そのスキルを再び使って、裏家業に手を染めるという、ありがちなアクション映画かと気軽に観に行ったのだが、これがなかなか深い話で、引き込まれた。
女の子?と思うほど可愛らしい幼い息子ビリー。父と2人で森にキャンプに行くシーンがじっくりと描かれる。
スナイパーである父ライアンは、鹿を撃ち捌きステーキにするが、ビリーは鹿を撃つことも食べることも拒否する。
男らしい父とは真逆だが、父はちゃんと嫌だと言えたことが勇気があると褒める。
ナイフでちょっと指を切ってしまったビリーに「お前の血は黄金の血なんだから大切にしろ」と言う。これは後々、彼の運命に大きく関わってくる。
ちなみに“黄金の血“とは世界で最も珍しいRh null型という血液型で、抗原を一つも持たないため、輸血の際“万能の血“でありながら、自分に入れられるのは世界で50人未満と言われているこの血液型の血のみなのだ。
なので本作にもそんなシーンがあるが、定期的に献血をしている。
そう本作のタイトル「トランスフュージョン」とは輸血の意味。
本作では妊娠中の母とビリーが、この黄金の血の持ち主。
そしてこのキャンプで野犬に襲われそうになったビリーの背後から、父は野犬を撃ち殺し彼を救う。このビリーの経験が、ラストシーンで大きく意味を成す。
強い父と気弱な息子。軍人を辞め抜け殻となった父と、思春期となり問題を起こす息子。大きな喪失感を抱え、心にずっと思い続けていたことが言えずその溝は深まる。
監督は本作で軍人時代の仲間ジョニー役で出演しているマット・ネイブル。
情に熱すぎるがゆえ、なんともぶっ飛んだ役だった。
昔、青く伸ばすと何故かカッコ良く見えたサム・ワーシントンは、今回は髪を伸ばし苦悩する父親を好演。
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