七色星団

名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊の七色星団のレビュー・感想・評価

3.5
クリスティ作品は取り敢えず観る。

実はケネス・ブラナー版のポアロ作品は大して期待はしていないという前提で観てます。というのも、彼の演るポアロはポアロじゃないですもん(笑)シャーロック・ホームズとか他の名探偵が入ってます。

名探偵エルキュール・ポアロと言えば、イギリスBBC制作『名探偵ポワロ』(何故かこのシリーズはポアロではなくポワロ)でポアロを演じたデビッド・スーシェが断然素晴らしく、このスーシェ版ポアロに比肩するのは『オリエント急行殺人事件』でポアロを演じたアルバート・フィニーくらいのもの。そのポアロをケネス・ブラナーがポアロを演ると聞いた時は驚いたもんです。
なので、ケネス・ブラナー版は名探偵ポアロとは考えずに鑑賞。

そして、それが最大限に良い方向へ作用したからか、『ベネツィア〜』はとても満足度の高い一本となった。

本作は僕が観た回でも座席のあちこちで悲鳴あがっていたのだけど、意表を突くオカルトホラーテイストでありつつ、クリスティ作品としての品も維持するというバランスが素晴らしい。そして最近特に思うのだけど、クリスティ原作を映像化した作品って、風呂敷を広げるまではゴージャスで良いんだけど物語を畳み始めた途端にショボくれた感じになっちゃう、そんやジレンマがありまして満足感は低めだったんですよね。

ところが本作は真犯人やポアロの推理を惑わす面子、そしてキーとなる人物など、登場キャラクター全体の配置が適当だし、映画の舞台が漂わせる雰囲気のおかげで、緊張感を失わないまま飽きさせず最後まで楽しめたことと、そして真犯人特定から最後の最後にちょいとひと捻りあったのが後味が良くて気に入ってる。

それにしてもクドいようだけどケネス・ブラナーはポアロに見えないし、彼自身も最早ポアロっぽさなんてどうでも良くなってるんじゃなかろうか―と感じた本作。
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