daruma

ほつれるのdarumaのレビュー・感想・評価

ほつれる(2023年製作の映画)
4.8
待望の加藤拓也監督作品!ようやく!!観ました…圧倒的に好きすぎた。私の好きな要素しかなかった。

まず、はじめに、加藤拓也作品を追っかけている自分としては、この映画の公開前に行われていた舞台「綿子はもつれる」を観てからの鑑賞でよかった、ということが挙げられます。(映像ですが。CS?BS?で映画公開に合わせて無料放送がありました。本当は舞台を観に行きたかったのだけれど、東京へ行く金銭的余裕がなかった…。。放送してくれて大感謝!)

映画はなるべくネタバレしないように(映画も道内は札幌でしかやっていなかったので観に行けず、ずーっとネタバレを我慢してた。。)、レビューは読まずにいたのですが、チラッと「舞台とは関係ないらしい」という口コミを見かけており、そうなのかな…?と思っていましたが、全然関係ありました!!
少なくとも私にはあった。
というか、完全に答え合わせだった。

主人公の名前が同じで、キーになることが全く同じ。

舞台は映画序盤の衝撃的展開で終わっています。
そこにまず、舞台を観てビックリしたのだけれど(故にめちゃくちゃ印象深い作品になった…)、映画の導入は公式などから流れて来ていたので、それは知った状態で観始めました。

と思ったのですが、オープニングからまずもう!
全然雰囲気が違う…

なんていうか、いかにもメ~テレシネマ?
深田晃司監督みというか。
完全にフランスっぽい。
確かフランスの助成金を貰って製作してるんだったよな…と思い出した。
(それも事前に知っていました)

そして劇伴もそれっぽい!!
「ドライブ・マイ・カー」の石橋英子さんです。
(これも事前に知っていました)
と言っても、劇伴(音楽)はオープニングとエンディングしか印象にないのですが、実際にそうだったかな…?
エンドロールが無音というのも絶妙すぎた。
完全にわかってる。

舞台は会話劇というか、当たり前ですが舞台なので無音でお芝居を続けるのには限界があります。(そういう劇もあるとは思いますが、一般的に、ストーリーを進行させる為には)
ですが、映像は無音で背中をずーっと映しても、行ける。
むしろ感情移入できる。
本作を観て、加藤拓也さん、映像の良さを最大限を活かしてるなぁ…!と思いました。(画角が正方形なのもその一つかな?)
そしてそれに応えられるだけの演者さんを選りすぐりで集めている。

舞台版の安達祐実さんもよかったですが、映画版の門脇麦さんもめちゃくちゃいいです。違う良さがあります。

麦ちゃんなので「あのこは貴族」を彷彿とさせるシーンがいくつかあります。主に衣装で感じたのですが、そこもわかってるなぁ!という感じ。
そして、ラストの服装が完全にそうだった。あれは洋服が物語っていると思う。

麦ちゃんはインタビューなどで「綿子の気持ちは全く理解できない、好きじゃない」と何度も言っていましたが(そう言いながらあの演技をするのも凄いが!)、私は凄く分かるなぁと思った…
多分、立場が近しい人が観たら絶対にわかる。
(何故加藤拓也さんはこの気持ちがわかるんだろう…とは思ったが。。性別も年齢も結構遠いのに…想像力の化け物というべきか)

田村健太郎さんも最近大好きな役者さんの一人で、今年の代表作で言うとドラマ「ブラッシュアップライフ」に妹ちゃんの夫役で出られてました。
本作では、めちゃめちゃ嫌な旦那さん…(笑)
でも、舞台版と違って、ちゃんと嫌になる要素がはっきりと描かれていたので(しかもしつこいほどに)、かなり主人公に感情移入しやすくなっているんじゃないかな…?そこが舞台の観客向けと映画の観客向け、上手い事分けて描かれているなぁと思いました。舞台のほうが不確定要素が多くても、そういうことに慣れているお客さんが多そうな気がするし、むしろ想像の範囲を広くしてあるのを好む人が多いような気がする。

余談ですが、最近、加藤拓也さんの舞台「ぽに」を映像で観ました。これは藤原季節くんが出ているのですが、彼が加藤作品の映画「わたし達はおとな」に通ずるキャラです(同じく藤原くんが主演で出ています)。本作もそれと同じような感じです。本作は出ている人は共通しませんが、キャラクターや設定が同じというか。(同一ではありませんが、非常に近いと思う)

(追記:めっちゃくちゃ嘘ついてました…!同じ人、出てます。田村健太郎さんがバリバリ舞台版に出てます。。メインキャラではなく面白キャラで、本作とは感じが違ったのですっかり抜けてました、すみません!!あと、脇の秋元龍太朗さんと佐藤ケイさんも同じです。加藤組、という感じかな?)

加藤拓也さんは舞台と映像の融合がめちゃめちゃうまいと思ったのですが、本作を観て、それを確信しました。
媒体は関係ないんだな…というか。
こういう、ボーダーレスな感じをどんどん拡げていって欲しい。

ちなみに加藤拓也さんの舞台を生で観たのは一度だけなんですが(これまた藤原季節くんが主演の別の舞台が北海道で上演されたので観ました。彼が北海道出身なので来てくれたのだと思う)、その舞台がめちゃくちゃよかった…ラスト、主人公の感情が自分とぴたりと一致したというか。自分が泣きそうになって、はっと気づいたら主人公も泣きそうになっていた。岸田國士戯曲賞を受賞した「ドードーが落下する」という作品です。演劇なのでなかなか鑑賞するのが難しいかもしれませんが、先月かな?CS?BS?で放送していました。また機会があればぜひ観てください。おすすめです。加藤拓也さんはエモ系がお得意ですが、少し社会派が織り交ざっているのが特徴です。そこがリアル。

本作のストーリーは、何も書かないほうがいいような気がするので、ぜひ、観て堪能してください。
(ただ、舞台版を観ていないと、一瞬、何をしているのかな…?と思うシーンがあるかも?とは思いましたが。でもしばらく観ていればわかります)
とりあえず、芝居の巧さは折り紙付きです。

(いちおう、ネタバレありで自分の感情をコメント欄に書いておきます。忘れないように…でもこれはもう一度観る作品かも知れない)

あと、私はちょいちょい笑えました。本作で笑うのはおかしいかもしれませんが、感情が極まりすぎると、私、笑いが込み上げてくるんです…変かな? 面白い、とかじゃないんですけど。ヤバい、に近いかな?

もつれが、ほつれていく感じがとてもよかった。
さすがメ~テレ。
(ノットヒロインムービーズに繋がるものがあると思う)
daruma

daruma