とても楽しみにしていた王道ラブ・ストーリー。
だったはずが…
キャストの強さを考慮すると、物語の希薄さが目立ってしまう、やや物足りない仕上がり。
10年ぶりに手紙が届く元カノ“ハル”（森七菜）と現在の恋人“ヤヨイ”（長澤まさみ）
そして、精神科医で元写真部の“フジ”（佐藤健）
フジとの関係性を主軸に紡がれていく物語。
関係性は良好に思えたフジとヤヨイの2人なのに、朝起きたらヤヨイが失踪。
改めて自分にとって彼女がどういう存在であり、大切な人なのかを考え出すという構成になっていて、時系列を変え、秘められた相手への想いがフォーカスされていく。
キャリア豊富な三人は当然上手だし、共感できるポイントも多々あるけど、スローテンポに美しく眩い光の背景カットが多いせいか、ボーッと眺めていくうち、退屈な気持ちに…
率直にもう少し動きがほしい部分。
とはいえ、役者陣は本当に素晴らしくて、フジと写真部の仲間である、“ペンタックス”こと中島歩の好演が目立つ。
以前から凄く好きな役者だが、ここでも魅力をいかんなく発揮。
何せ彼は“声”がいいし、雰囲気もある！
佇まいからして素敵。
更にもう一人挙げたいのが、仲野太賀の
存在。
ゲイのBARオーナーを演じ、縁の下の力持ち的に作品を彩るエッセンス。
フジとヤヨイについて会話しているシーンが印象的だった。
彼から漏れ伝わるマイノリティーとして生きる辛さ、それでも一生懸命頑張っている“意思表示”がやけに沁みてくる。
意図したわけではなく、流れ着いた先で「こうして生きていくんだ！」と滲ませる覚悟。
背負うものが沢山あるんだろうね。
映画、ドラマ問わず、あらゆる作品に出ている彼だからこそ、ここでもしっかり持ち味を発揮していた。
フジ、ヤヨイ、そしてハル。
繋がりが輪郭として現れてきて、過去と今がリンクする瞬間。
「あ、こういうことだったんだ」と、一気に世界は明瞭になっていく。
本当にポテンシャルを強く感じさせる作品なので、全体として今一つもったいない。
役者陣に確かな力があるぶん、ストーリー、構成の弱さを明白に感じてしまった。
演出なのかな。
ちなみに原作未読。
もしかしたら、原作ではそうした気になる部分が補完されているかも？
個人的に期待値を上げすぎた弊害が思い切り出てしまった形。
そのため、十分及第点のラブ・ストーリーだとは思います。
ただ、これほどの面子を揃えたならもっと…
