タジキスタンの内戦下、人びとは宙ぶらりん。あちらに行こうとしても、流れ弾に当たるかもしれない。故郷を捨てられない、かといってとどまっても食べるものもない。貨幣の価値は下がる一方。せめて、一か八かで賭け事をして刹那を楽しむ。そんな不安定な社会状況で、父の賭け事のかたにとられた娘が、世情に流されずに、男社会の支配に抗い、独り生きようとするラブコメ風の風刺。内戦をメタファーにした女性の解放宣言にみえました。
組み合わせが斬新な設定です。
内戦、ロープウェイ、賭博、恋愛、難民。遠くに銃の音がつねに聞こえています。
劇判が頗る良いです。
主人公の女性が美しくも強い。
出てくる女性たちは皆必死に働いている。
でも、男たちがすべてダメじゃんレベル。
なので、ロープウェイの中のデートは、ロマンチックのようで、私は彼女と同じように怒ります。
恋人未満の男性の生ぬるい愛が足かせになっていたけれど、最後もよかった。安易に流されない、でも情は添えている。賢い女性。
彼女が逃げたかったのは戦火で浮き彫りにされた男社会。暴力と怠惰、無策、欲望のままに生きる男たち。男の支配に慣れきってしまいそれを助長する女たち。
スモーキーな映像と相まって、空虚と寂寥感ある不思議な世界観を醸し出していました。