フロントスカイ

PERFECT DAYSのフロントスカイのネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

「アメリカの友人」(1977年)や「パリ、テキサス」(1984年)、「ベルリン・天使の詩」(1987年)等を手掛けたヴィム・ヴェンダースの作品。画面比率4:3

役所広司演じる主人公の平山は公衆トイレの清掃員。最初、平山の一日のルーティンである日常の繰り返し。セリフを排してただただ淡々と描く映像に、「何だ、これは...」と少し戸惑った。
平山が清掃する数々の公衆トイレ🚾の建物のデザイン。そのスタイリッシュさに驚いた。

平山の生活の一部であるカセットテープ、フィルムカメラ、畳の掃除の仕方等どれもアナログ感・昭和感が漂い味があるのだが、自ら現代社会から離れた生活を望んでいるようにも見える。

特段何かが起きるわけでもなく、何かを説明するわけでもなく進んでいく。
ルーティーン、毎日同じ単純な「繰り返し」を丁寧にしていくからこそ、そこにあるちょっとした「変化」に気がつき「発見」がある。そして、公園のベンチに座りランチのサンドイッチを食べながら木々と陽の光が織りなす「木漏れ日」を見て感動する。
そんな他愛もない一日の積み重ねが、彼にとって「PARFECT DAYS」なのでしょう。豊かさだけが幸せではない。と...

あるシーン。
「たくさんの世界がある。それらは繋がっているようで繋がっていない」と語る。
裕福な父親の会社から逃げてしまった負い目、悔しさ、もどかしさ。苦しんで葛藤してきて今の彼があることが想像される。
「今は今、今度は今度」と語る。
常に、今この瞬間、その時を生きていくという言葉だろうか?
「影は、重なり合うと濃くなるんですかね...⁉︎ 結局何もわからないまま、(人生が)終わっちゃうなあ。」とがんの病にかかった三浦友和
「濃くなってますよ!変わらないなんて、そんなバカなことはないですよ!」と役所広司がキッパリと返す。
セリフを多く重ねなくても平山の背景にあるものを感じさせる厚みのある演技が素晴らしい。
ラストシーンは、大好きな70年代のカセットテープの音楽をバックに、車の中で平山が笑いながら微かに泣いているような複雑な表情のロングで終わる。絶妙!

変化のない毎日繰り返しを退屈だ、憂鬱だと捉える人もいるし、逆にそこに変化と喜び(幸せ)を見い出す人もいるだろう。
幸せとは?きっとそれは人それぞれ。

映画を見終わり、これから残りの自分の人生への向き合い方に気付きとヒントを与えてくれたような気がする。
素晴らしい映画を観た!