なつこ

PERFECT DAYSのなつこのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.2
2600本目、おそらく今年最後の劇場鑑賞は今作と決めてました!

セリフが極端に少ない分、心に響くセリフが色濃く残る、素敵な時間でした。
日本の話だけど、日本人には撮れない透明感で包まれた作品。

慎ましくも心地よい暮らし。
とても憧れる。
私は物欲や好奇心が抑えられない煩悩の塊なので笑 いつも何かを欲してしまう。

平山さんは、自ら欲することはない。
木漏れ日は、そこにあるもの。
芽吹いたいのちも、たまたま出会ったもの。それを大切に暮らしている。

他者に対しても誰でもそう。
その人を受け止める。
受け入れる、ではなく受け止める。

後輩にせびられても、帰りの車内ではいたずらっ子のように笑い、迷子の手を引いてあげてその手を除菌シートでゴシゴシされても、子供には笑顔で手を振る。
どうしようもないと思ってた後輩が、幼馴染みに見せる優しい一面をみて嬉しそうに微笑む。

だから、色んなものが溢れ出したラストの表情には胸を掴まれた。

監督がロケ地も見て回ったとのことですが、アパートはもちろん、いまどき洗剤別入れのコインランドリー、シンプルな銭湯、浅草地下通り…国外の監督とは思えない、しっくりと馴染んだ映像でしたね。

起床して仕事に行くルーティン、同じ毎日の繰り返しなんだけど、少しずつカメラワークを変えていて、平山にとってこれは毎回新しい1日なのだと気付かされる。

「住む世界が違う」
そうかもしれない。
私もきっと平山さんの住む世界とは違う世界にいると思う。
彼は他に仕事がなくて清掃をしてるのではないと感じた。彼は選んであの仕事をしている。
そしてあんなに極めているのに、執着は感じない。

先程も書きましたが、ラストの平山さんのアップ、個人的には「君の名前で僕を呼んで」以来の、表情だけで魅せる最高に感情の揺れる長回しでした。
さすが役所広司としか言いようがない。

あと音楽!サントラ欲しい〜。
アニマルズやルーリード、優しいカセットの音、通勤がなんだかとても豊かな時間に思える。

これは映画館という集中できる空間で観て欲しい。配信で、ながら見では感じられない小さな機微がちりばめられている。
アクションもVFXもないけど、劇場案件。ぜひ平山さんの世界に入ってみて欲しい。

あんなにしっかりとお掃除してくれてるトイレなら、使う人も少しは「キレイに使おう」とと思ってくれるんじゃないかな。
そうであって欲しい。
なつこ

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