Eryyy678

首のEryyy678のレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
4.1
もうちょっと硬派な映画かと思いきや、かなりユーモラスな映画でした。少なくとも前半部と後半部で抱く作品のイメージがかなり異なる。人間味に溢れた登場人物達が、血生臭い殺生の世界で爆ぜるさまは、悲壮さよりもあっけなさを感じさせる。しかし、魔王だろうがカリスマだろうが、ただの人。「死」とは本来、あっけないものです。
まるで神性のごとくその個人に纏っていた生命の輝きも、死によってあっけなくその「色」を失い、切断されるわけです。ああだから死に様こそが大事なのかと、思わずにはいられません。

まあそれはともかくとして、この戦国の乱世においては「首」というものは手柄の証。されど果たしてその首が、高名な武将の本物の首だと証明することは、この時代においていかに難儀なことか。突き詰めれば、死の本人証明が出来れば、首があろうがなかろうがいいのかもしれない。

それにしたって秀吉を演じる北野武の演技のおかげ(せいとも言える)で、往年のバラエティのようなシュールさに満ちたシーンの数々。たけしの双璧を成すのは、さすがにサイコパス演技が過ぎるだろう信長でもないような気がする。身代わり嵌めプレイに邁進する家康、真面目な雰囲気がかえって浮いている光秀、激情の黒人武者弥助、などなど何か忘れられないキャラクター達の個性がそれぞれ強い。登場人物、というよりキャラクター性が強いような。でも戦国時代に抱く血みどろのイメージと、妙なギャップがあるんですよね。だから余計に可笑しみを感じるのかも。
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