悪魔の毒々クチビル

タン・ソイ:美しき殺し屋の悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

タン・ソイ:美しき殺し屋(2023年製作の映画)
3.4
泥沼から抜け出せないなら、引きずりこめばいい

男に恨みを持つ3人の少女による復讐と制裁のお話。


ベトナム産アクション「ハイ・フォン」の前日譚で、監督は「ハイ・フォン」主演のベロニカ・グゥ(現在は"ゴー・タインヴァン"名義で活動中)で3人を殺し屋として鍛える師匠ジャクリーン役でも出ています。
因みに世界観は同じでもベロニカの役柄はそれぞれ全く異なるキャラとなっています。
「ハイ・フォン」のキャラもチラッと何人か出てくるので、前作は観ておいて損はないです。

ネトフリにあったあらすじに「ハイ・フォン」に繋がる物語って書かれていて思わず観ちゃったんだけど、まぁ中々。
良かった所は当然アクションでして、格闘は勿論のこと銃撃もしっかりこなしていました。
薬中ゾンビとのバトルが特に良かった。
終盤は全然弾切れを起こさない不自然さが目立ちましたが。
メインは主人公のビ、元気キャラのホン、クール系のタンという分かりやすいキャラ付けトリオですが、ジャクリーンも最後にアクションがあって相変わらず格好良かったです。
一応「ハイ・フォン」の時点でアクション引退したようですが、主役でない形ならまたちょいちょいアクションしているようなのでまだまだ活躍して欲しいですね。

敵の親玉も変に掘り下げずシンプルクズなところが潔くて良いし、「遊☆戯☆王」のキャラみたいな髪型のヤツとかこれまた印象的でした。

ただ結構好きじゃない所もあって。
まず中盤のバイクチェイス。
ここ、背景のCGが異常にショボいんですよね。
流石にそんなに予算は掛けられなかったとは言え、こういう生身のアクションで魅せる作品でアサイラム映画レベルのチープな合成映像を見せられると冷めます。
途中からタンがバイクに跳び蹴りする所まで合成だったのはマジで酷かったです。しかもこのチェイスシーンが無駄に長いんだ。

あと「悪人を憎む」というより「男を憎む」スタンスが強すぎて、男は片っ端からボコったり殺しているのに人身売買組織にいたおばちゃんだけ見逃したのは引きました。
いや、このおばちゃんも拉致って来た女の子達を引っ張たいたり暴言浴びせたりと普通にクソ野郎なんですけど。
何でおばちゃんはスルーしてその後逃げようとした男はきっちり殺すんですかね。
ここでもそう言うノリですかそうですか。

分かりやすい敵キャラがいるのにラストの方で妙に話がごちゃごちゃしたのもイマイチと言うか、ラストバトル自体は良かったんだけど変な展開にさせちゃったなと思いました。

で、最後のアレなんだけど、要はそういう事よね?結構衝撃だったんだけど、何でそうなったかは割と疑問でした。これはどちらかと言うと「ハイ・フォン」についての事ですがネタバレ欄にまた書いておきます。

ドラマパートも悪くはないけど良くもない、というか。とあるキャラがあからさまな死亡フラグ建てたりと、ちょっと安っぽい感じがしました。

幾つかのアクションだけを切り取れば見応えある内容でしたが、作品自体はあまり好きな作風ではありませんでした。個人的には「ハイ・フォン」の方が断然好きです。
ベロニカさん、アクション映画を撮るのは向いているとは思うのでそっち方面での活躍も期待したいですね。