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SISU/シス 不死身の男の教授のレビュー・感想・評価

SISU/シス 不死身の男(2022年製作の映画)
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あまり内容については語ることがない映画。しかしその使い倒された定型の(しかも近年は乱発気味)ジャンル・ムービー。
定型であるが故に、求められるのはその「お約束」としての「型」をどれだけ忠実に踏襲するかということと、それをどれだけ新鮮なビジュアルやアイデアで見せるか、ということになる。

その点にはおいてはまず、前者。
定型としての、主人公であるアアタミ(ヨルマ・トンミラ)の別格的な強さ。
ここは俳優自体の魅力と迫力、威圧感によって成立している部分が大きい。
そしてあまり情緒的にならず途中人質となっている女性たちとも表立った共闘はせず「大義」に加担しないところ、目覚めない点が良い点。
アアタミにとってはナチスは、金塊に託した「尊厳」を奪う障壁でしかなく(あるいは愛馬への復讐)、それをただ取り除くために戦っているシンプルさが作劇をクールにしている。

また後者の部分として「ガールズ・エンパワーメント」的な女性たちの描き方についても、良い意味で深くは掘り下げず、彼女たちにとっても尊厳を奪う「障壁」として胆力を持って戦う姿のみを描写している点もクール。

そこに機能しているのが、比較的単調な展開をワンエピソード毎の「章立て」にしている構成。
先の「現代の映画で取り扱うイシュー」を取り込むにあたってのメリハリとして機能していて「皆殺し」に至ってはアアタミと女性たちによる逆襲が見事に機能している。

アクション自体も「ジョン・ウィック」ばりの派手な見せ方でなく、粛々と殺害していきながらポップな形で「ゴア」を決めてくるバランス。
また陸上での地雷を使った戦闘、川の中での水中戦、ラストの空中での格闘など、全部乗せで構成されているので飽きさせない。
しかも余分を完全に削ぎ落として90分でまとめている手際の良さも大きい。

その為、基本的に欠点はないというか、もう「不死身です」と説得されているので、実際普通は死んでる、みたいなヤボなツッコミも封じられているので、本当に特に言うことがない映画。
個人的には全編高揚したわけではないが、適材適所で感情が動かされるところは多く良作だと思う。
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