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マリウポリの20日間/実録 マリウポリの20日間のnomoreのレビュー・感想・評価

5.0
"微力だが無力ではない"

2024.5.2 朝のニュース
4/29 ウクライナの「ハリーポッターの城」と呼ばれる教育施設としても使用されているお城が、ロシア軍のミサイルよって攻撃され炎上。少なくとも5人が死亡。5歳の女の子を含む32人が負傷しているという。
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改めてウクライナでの戦争が続いていることを知る。
しかし、恐ろしいことに私が食いついたのは、むしろ「ハリーポッターの城」だったのだ。
戦争の事実よりも、被害にあった人々よりも「ハリーポッターの城」の方だったのだ。

まるで「対岸の火事」を見るようにニュース映像をベッドの上で見ていた自分。
映像提供はAP通信だった。

そしてこのドキュメンタリー映画を観に行った。

ロシアによるウクライナ侵攻始まりの20日間。
マリウポリで何が起こっていたのか。

「対岸の火事」ではない。
私たちは戦争の現場に放り込まれる。

ライフラインも情報もなくなり、ただただ恐怖に怯え、逃げ惑う人々の惨状。

病院すら破壊され、妊婦と胎児ともに亡くなってしまう悲劇。
その中で産まれる命。

「どんな感情でいることが正解なのか」

ロシア軍の砲撃によって亡くなった一般市民の遺体を袋に詰めて、掘った溝の中に放り込む人へのインタビューで発せられた言葉だ。

それは私たちにも向けられている。

この命懸けで撮ったドキュメンタリー映画を観てどんな感情になるのか。
そしてどんな行動を起こすのか。

まずは知ることから始めなければならない。

まずは多くの人に観てもらいたい。
戦争の現場で何が起きているのか。

日に日に関心が薄れているこの戦争は、まだ終わってはいないのだ。

泥沼化するこの戦争をやめさせるのはどうしたらよいのか。
その正解を私は持ち合わせてはいないけれど。
とてつもない無力感に襲われるけれど。

とにかくまずは知ることから始めなければならない。
そして感情を持つこと。
思考を持つこと。
小さな行動を起こすこと。

涙の一粒ほどの微力だけれど、決して無力ではないことを信じて。

世界中の涙が集まれば、戦争という火事は消せることを信じて。

この作品は米英アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞他、たくさんの映画賞に輝いている。

命懸けでこの映像を撮影し届けてくれたAP通信記者に敬意を表したい。

監督が言うように「この映画が作られなければよかった」世界にするためにも、多くの人が観てくれることを祈念したい。

我が地域での上映は1館のみ。
私の鑑賞した回の観客は3人だったけれど...
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