いずみや

ビヨンド・ユートピア 脱北のいずみやのレビュー・感想・評価

5.0
すごいドキュメンタリーだった。すぐ隣りにあるのに、北朝鮮という国・そこに住む人々について全然知らなかったな…と思わされた。
苦労してようやく辿り着いたベトナム(だがまだ旅は終わりではない)には明るい木々が生えていて、きれいなシャワーを浴び、果物を食べ、初めて外の世界に触れる家族。そのとき祖母が口にした「元帥様は立派な人なのに、北朝鮮が豊かでないのは国民が愚かだから?そうでなければわからない」という言葉がすごくつらくて…でも閉鎖的な独裁国家でずっと暮らしていたらそう思っちゃうよね…
でもこれだけ過酷な目に遭ってもなお、彼らには故郷を懐かしむ気持ちがある。脱北者の安全が確保されるべきなのはもちろんだが、彼らは好きで故郷を捨てたわけではない。生き延びるために生まれ育った土地から脱出せざるを得ないなんて、本当に酷すぎる。世界中のあらゆる場所でそんな状況はあってはならない。

(追記)
パンフレットに載っていたインタビューで、キム・ソンウン牧師が「中国が脱北者を難民として認定するよう国際社会が働きかけるべき、そのためにこの映画を作った」「こんな状況を作っている国際社会にも問題がある」と話していた。北朝鮮の収容所を描いたアニメ「トゥルーノース」もそうだったけど、これほど閉鎖的な国家にとって、外部にその実態を伝えるのは本当に大きな意味があると思う。比喩ではなく、この映画たちがいつか誰かの命を救う可能性がある。だからたくさんの人に見てほしい。
あと、北朝鮮という国の成り立ちを説明するとき、1945年に日本が敗戦するまで朝鮮半島は植民地だったという話から始まるので、今の北朝鮮があんな国になっているのに日本も無関係ではないんだよな…と改めて思った。私たちには責任がある。
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