悪魔の毒々クチビル

クリスマス・ブラッディ・クリスマスの悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

3.9
「ペット・セメタリー2が前作より面白い訳ないだろ!!」

ハイテクサンタロボが暴走して人を殺しまくるお話。


最近じわじわとホラーファンの間で知名度を上げている(気がする)ジョー・ベゴス監督の最新作。
確か「悪魔のサンタクロース」のリメイクじゃなかったっけ?何か共通点あったかな?と観終えてから疑問に思っていたのですが、どうやらリメイク版として脚本を書いている時にベゴス監督の大好きな「ターミネーター」の要素を追加してサイボーグサンタスラッシャーにした結果、あまりにもオリジナル版とかけ離れていると言う理由でゴーサインが出なかったんだと。
なので一つのオリジナル作品としてコロナ禍の間で脚本を書き進めて出来上がったのが今作になります。
と言うか本家のシリーズも何作目かでおもちゃサンタが襲ってくるやつあったような。って考えるとこの路線でリメイクしても、要素的な意味でシリーズ集大成とも言える内容になってた可能性も…

そんな経緯を経たこちら、ちょっと勝手に期待値上げすぎた気もしましたが面白かったです。
オープニングの「子どもと一緒に家族団欒で飲酒しようぜ」他、退廃的なCMからスタートし、作品全体を彩るざらついた画質、古風なBGMとシンプルスラッシャーの中にベゴス監督らしさが随所に散りばめられている安定の仕上がりでした。
キャストも主演のライリー・ダンディ以外は監督のデビュー作「人間まがい」や「マインズ・アイ」で主役を務めたグラハム・スキッパー、時にプロデューサー兼俳優で監督の作品に出ていたジョン・イーシアー、前作の「ブリス」の主役ドーラ・マディソン・バージ等々、ベゴス作品の常連が勢揃いしております。
今回のサイボーグサンタを演じたのも、「ブリス」のエイブラハム・ベンルービだし。

ホラー云々の前に序盤から中盤までほぼノンストップで繰り広げられる、主人公トリと彼女の友達以上恋人未満なロビーとのオタクな会話劇をどう感じるかで割と今作が好きになれるかが懸かっていると思います。
もうね、ずっと音楽か映画か下ネタについて互いに熱弁していて、俺はこの二人のオタクが故にちょっと面倒くせぇなと思うもチラホラ共感出来る点もあるダラダラした会話が意外と好きだったのでそこも楽しめました。ちょこっとメタルの話題も出ていたし。

トリのキャラも結構良くてオタクかつビッチな性格も作風にピッタリだったし、襲われる直前まで酔っ払ってラリっていたとは思えないくらいには行動力もありただ叫んでいるだけではない印象的なキャラでした。

そこから隣人一家がサンタに惨殺されるのをトリが目撃してからは、さっきまでの喧しさが嘘みたいにドキドキハラハラのホラーに切り替わる流れも良き。またうるさくなるけど。
クリスマスカラーに彩られながらドゥーミーに浮かび上がる、斧を構えたサンタのシルエットがとても格好良かったです。

あと基本的にみんなすぐ死にます。トリと付き合い長かろうが初対面だろうが、そこら辺の事情関係なくサクサク殺られていきます。
まぁ相手ロボットだからね、警官がいくら銃で撃ってもろくなダメージにならないからしょうがないけど、ちょっと呆気無さ過ぎな気はしました。

ゴアシーンはほぼ一貫して顔面破壊のみで、メインウェポンの斧で顔面叩き割ったり踏み潰したり叩きつけたりと、そう言う意味ではワンパターンではあるんだけどちゃんとあるにはるのでそこは良かったです。
あと斧振り下ろしただけでそこまで頭部パッカーンならんやろ!な描写はホラーでは有りがちですが、今作は怪力ロボがキラーなのでそこのパワフルゴアもちゃんと説得力あるものにしていて偉いなと思いました。

終盤は爆発で半壊してロボ部分が露になってちゃんと「ターミネーター」しながらしぶとくトリを付け回すんだけど、しぶとい系ホラーとしての見応えがあった反面、ここは流石に「まだ生きていました!」な展開を何度も繰り返していて助長に感じる事もありました。が、「ターミネーター」っぽさを取り入れたかった監督としてはここは絶対やりたかった箇所なんだろうなぁ。

もうちょいグチャドロしているモノを期待していましたが、これはこれでしっかり個性的な作品に仕上がっていて充分楽しめました。
クリスマス直前に新たなクリスマス映画が追加された事だし、良い子のみんなは当日の楽しみがまた一つ増えたね!やったね!!