ぶみ

パスト ライブス/再会のぶみのレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
4.0
忘れられない恋はありますか?

セリーヌ・ソン監督、脚本、グレタ・リー、ユ・テオ主演によるアメリカ、韓国製作のドラマ。
子どもの頃、お互いに恋心を抱きながら離れ離れになってしまった主人公二人が、24年ぶりに再開する姿を描く。
巷で話題になっていた本作品、私の通常の守備範囲のスクリーンでは上映しておらず、配信待ちかと諦めかけていたところ、近隣のミニシアターでまさかのセカンド上映が開始されたため、こんなチャンスを逃すものかと迷わず鑑賞。
主人公となるニューヨークで暮らすノラをリー、ノラの幼馴染で韓国ソウルで暮らすヘソンをテオ、ノラの夫で作家のアーサーをジョン・マガロが演じており、登場人物はほぼこの三人。
物語は12歳の時に出会ったノラとヘソンが24歳の時にオンラインで再会、そして36歳となり24年ぶりに対面での再開を果たす二人の様を中心として進行。
冒頭、ノラ、ヘソンそしてアーサーの配役の説明がないままに三人がバーカウンターで話し込んでいる状況に対し、第三者目線で三人の関係性を想像するナレーションが入るシーンでスタートするのだが、まずここが素晴らしく、実際に同じようなシチュエーションで、全く見知らぬグループの間柄を勝手に妄想して話のネタにすることもあるため、一気に心を鷲掴みにされたところ。
その後、ソウルで幼馴染だった12歳当時や、ノラの海外移住により離れ離れとなった後、24歳でオンラインによって再開し、交流を深める姿が描かれ、ここまででも十分二人の想いが丁寧に綴られた仕上がりとなっているが、本作品の肝はここから。
未婚のまま36歳になったヘソンが、ノラが既婚者であることを知りながらニューヨークへ会いに行く流れとなり、まんまとそのお互いの心中に想いを馳せる展開が続くことに。
そして、多分一番モヤっているのはノラの夫であるアーサーであることは推して知るべしであり、バーのシーンでの疎外感や、ノラの表情を直視できない様子は、見ているのが辛くなるほどのもの。
誰かの想いが少しでも溢れ出してしまうと、すぐにでもバランスが崩れてしまいそうなほどギリギリの状況は、ハラハラものであり、そんな三人が迎えた結末は、まあそうなるんだろうなと思いながらもジンワリと沁み渡った次第。
実年齢では40代となるリーが24歳役を演じるのは流石に厳しかったのが唯一残念なところではあるが、そのラストシーンでの長回しの空気感や、ウーバータクシーが来るまでの二分間は至極の魅力を放っており、多分青二才の頃であったならば全く響かなかったであろうところを、本作品の良さや、それぞれの登場人物の心情を汲み取ることができるようになった自分に大人を感じることができたとともに、単なる恋愛ドラマで終わることなく、先日観た濱口竜介監督『悪は存在しない』のキャッチコピーである「これは、君の話になる」さながらに自身の過去と未来まで脳内補完させる良作。

今はもう子供じゃない。
ぶみ

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