旅するランナー

パスト ライブス/再会の旅するランナーのレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
4.5
【See you next jinyon(縁).】

男女二人の12・24・36歳に渡る出会いと別れ。
カナダ・アメリカに移住し劇作家となったノラ。
韓国に住み続ける韓国人らしい韓国男性ヘソン。
再会とすれ違いが、縁(イニョン)という言葉を交えて描かれます。

アメリカ人の夫アーサーの、妻への寄り添い方も絶妙です。
ヘソンがアーサーに語る「彼女は僕にとっては去る人だけど、あなたにとっては残る人なのだ」というセリフも心に響きます。

そして、帰国のためにタクシーを待ちながら、見つめ合う二人の視線。
ノラの涙は、夫の優しさに対してなのか、この縁での別れへの悲しみなのか、祖国との離別を感じ取ったのか。
とても深い、大人の恋愛映画です。

アクション映画だけでなく、恋愛映画においても、韓国映画は日本映画の先へ進んでしまいました。
この映画は、A24と韓国CJ ENMによる初の共同製作作品です。
CJ ENTERTAINMENT AND MERCHANDISINGは、韓国のCJグループの子会社。
CJグループはサムスングループに属します。
1953年、創業者李秉喆(イ・ビョンチョル)は、サムスングループ初の製造業として、前身企業となる第一製糖工業株式会社を設立。
CJとは、第一製糖のラテン文字表記「Cheil Jedang」に由来します。

町山智浩著「最前線の映画を読む Vol.3 それでも映画は格差を描く」に、CJエンタテインメントの副会長マイキー·リー(創業者の孫娘)がスピルバーグから映画ビジネスを学び、ポン·ジュノ監督作「パラサイト 半地下の家族」を生み出す経緯が書かれています。
そして、ついに、甘いだけでなく、ビターな大人のラブストーリーもヒットさせました。
一方で「ゴジラ-1.0」のアカデミー賞受賞は、東宝初の海外自社配給による成功だと言われますが、日本映画が韓国映画にまだまだ遅れを取っていることは事実です。
メジャーリーグみたいに、映画界にも大谷翔平のような人物が現れることを切望します。
次の縁まで待ってられないです。