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夏の終わりに願うことのギルドのレビュー・感想・評価

夏の終わりに願うこと(2023年製作の映画)
4.3
【一瞬でも楽しい日常を過ごしたかった】【東京国際映画祭】
■あらすじ
7歳の少女ソルは、祖父の家で父親のためのパーティーの準備を手伝う。やがて彼女はその日がかけがえのない日になることを知る…。ベルリン映画祭でエキュメニカル審査員賞を受賞。

■みどころ
面白かったです!
大好きな父のためのパーティに準備〜参加したソルのお話。

ソルは祖父の家に行き、父のホームパーティーの準備に参加する。
祖父の家には親戚家族や身内が集まっている。その一方で、父親は介護しながらなんとか歩く姿を見せている。
父親は映画を観るに末期がんであり、父親へのホームパーティーはそれこそ人生で最後かもしれないという緊張感があり、楽しいパーティーながらもその準備の中には「父は亡くなるかもしれない」という漠然とした不安とイラつきに現れてしまう。
そんな中でパーティーを迎えるが…

本作は近い将来、父が亡くなるかもしれないという不安に駆られた家族と、微妙な温度感から距離を置く娘ソルを描いた作品である。
ソルは冒頭の祖父の家に入るシーンでピエロの髪を被るシーンがあったり、パーティの準備をサボったり友人と一緒に遊ぶ子供らを見て斜に構えて距離を取ったり一人遊びに徹する異質な存在として描いている。

パーティという楽しいイベントがありながらも父親と別れる事への恐怖に屈しないようにポジションを維持していく姿を色濃く映していることを伝えて、そこから悲しい映画である事を示す。
そんなソルに、一瞬でもパーティに参加するシーンを与える事で悲しさから離れて楽しい時間を過ごすシーンを映す。
けれども、映画が進むにつれて楽しかったソルの笑顔がなくなりポーカーフェイスに戻る。

途中までホームパーティの映画かと思ったら、随所に挿話されたスピリチュアル、SFがオセロのように配置されラストに盤面が揃ったことへのマジカルさを現出したのだ。
けれども、そのマジカルさはシンデレラのように時間が続き、終わり≒父親の死を本能的に察する形で本作は幕を閉じる。

そんな刹那な楽しさと悲しさを映す映画に心打たれました。
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