小さな世界の小さな物語を描く佳作。心温まる展開は、古典的で予定調和的なところはある。ながら、主役の少女の愛おしさと、預け親二人の優しさ、切り取られる画の美しさに、惹き込まれる。
中でも少女の心の成長を、細やかに演じ分けた主人公のキャサリン・クリンチが出色。感情と言葉が豊かに変化するという役柄と、ほぼ順撮りという環境がハマった可能性もあると思うものの、これが初出演というから凄い。
気丈に振舞い、秘密があるのは恥と言いつつも、秘密にせざるをえなかった真実が胸に刺さる。背中で語る寡黙なショーンに対し、向けられる最後の二言は、父親なら誰でも胸に迫り大きな余韻を残す。沈黙の意を説く海岸シーンが印象的。走り出す爽快感も、ベタながら熱い。
一人しかしない親としての自分の存在と、かけがえのない子供との関係を、ゆっくり考える瞬間を与えてくれる。うちに秘めた一方向の感情が、一方向ではないことを確認するのに、言葉と行動何れも必要。新しいものが提供されるわけではないが、心がリセットされる良作。
