らんらん

ニモーナのらんらんのレビュー・感想・評価

ニモーナ(2023年製作の映画)
4.3
3DCGアニメーション、個人的には人物の動きがとても良かった。
ふと挟まれる、滑らかで微細なゆっくりとした動きが、繊細な感情の動きや息遣いを感じさせて見応えがあった。

物語は、現代/近未来と中世を融合させたような、とある国。
この世界観も面白い。
入れ物は近未来、しかしそれをマネージする思想や制度は時代遅れの中世という皮肉が効いている。

この国は壁に囲まれていて(見えない壁)、その外へ出ようとする者はいない。危険だから。

その危険から国を守る由緒正しき騎士団。優生思想が採用されていて、一般市民は騎士にはなれない。
その中で初めて、庶民の出自で騎士に任命されたバリスターだが、ある濡れ衣を着せられ追われる身になってしまう。
身を隠しながら濡れ衣を晴らそうとするバリスターと、協力すると言って現れるニモーナによるバディものだ。

風刺と皮肉に満ちたスピード感のあるコメディだが、ちょっと盛り込み過ぎたんじゃないかという気はしてしまう。

庶民出から成り上がったバリスターは誠実な苦労人ではあるけれど、見方によっては、「モンスター幻想」という支配者の作り上げた幻想を後生大事に有り難がる、アンポンタン騎士団の一人だ。
自由に自分を表現するニモーナとのやり取りは、バリスターにいじわるなもので苦笑い。

後半はニモーナの痛みに焦点を合わせて行くが、ラストはこれで良いんだろうか。ちょっともやもやする。

マイノリティであるバリスターと、疎外されたニモーナ。
どうも自らを「正統派常識人であり、正しい」と自認しているらしきバリスターによる勧善懲悪の物語と化してしまい、結局友情って美しいね、的な安易さに落ち着き、騎士団という社会システムの方はどうなっちゃったの?という、薄ら残る洗脳と共に別の恐怖へと扇動される大衆っぽさが、意図せぬ怖さを呼んで終わる。考えなくてはならないのは、敵対、対立、排他、排除、が前提の善とは何ぞやということ。前半はそんな善がキラキラとして主人公二人を追う。

第96回アカデミー賞長編アニメーション部門ノミネート作品。受賞は宮崎駿『君たちはどう生きるか』。
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