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ナイアド ~その決意は海を越える~のsayuriasamaのレビュー・感想・評価

4.1
夢はあきらめない。そして、信頼できる仲間たちの支えがあってこそ。

Netflix劇場公開作品。
マラソンスイムの元選手のダイアナ・ナイアド(アネット・ベニング)は、還暦を迎え、日々に張りあいがないように感じ始めた。そして、28歳のときに挑戦し、失敗したキューバ・ハバナ〜フロリダ・キーウェスト間約160kmを遠泳するチャレンジに再挑戦することにする。

海水に浸かって何日も泳ぎ続ける、自分の信念を頑固にも曲げない熱いアネット・ベニングの熱演も然ることながら、彼女を励まし、ときには反発し、最後まであきらめずにナイアドの夢を支える、コーチのボニー・ストール役:ジョディ・フォスターの大熱演も素晴らしい。
こんな友人を持てたら心強いよなと思える優しさと強さがほとばしっていた。
この二人の半端ない熱量とともに、マラソンスイムを成功させるために必要なプロチームのメンバーもかっこいい。特に航海士(ナビゲーター)役のリス・エヴァンスが静かに、かつ的確にナイアドを導く職人技を光らせていて好感度抜群。

映画では、ナイアドが競泳プールで泳ぎ、ブランクを取り戻すシーンから、大海原で泳ぐシーン等々、大半が水と泳ぎに関するシーンで構成されていて、実は単調になりがちな画面が続くのだが、単に史実通り泳ぐ→失敗を繰り返すだけではなく、失敗するたびに、ナイアドの抱えていた過去の傷や恐怖が呼び戻されていく構成になっていて、ドラマとしても飽きさせない。そして、このドラマ部分が非常にタイムリーな話題かつ、重い話題であり、現代に観るべきパワーとセンスをもっている。

視覚効果も、毒クラゲの毒々しい美しさ、そして穏やかなプールから南国の海、そして荒れる海まで様々な水の状態が表現されていて素晴らしいし、なにより波の音や水をかき込むしぶきの音、潜ったときの音も効果的に入っていて、ネイチャードキュメンタリーならともかく、水泳劇映画でここまでリアルだった作品は他にあったかな?という高クオリティ。
そうそう、ストロークのペースキープのために、プレイリストもあるようで、「ラストダンスは私に」や「サウンドオブサイレンス」が出てきてました。自分も、プールで何往復か泳ぐ時は曲を思い出しながら泳いでいたので、なんとなく嬉しかったです。


ダイアナ・ナイアドは、アメリカではSNLやトークショーのゲストにもなっていらっしゃることから、ある程度の知名度があるものの、日本では知名度が全くない人の伝記ものだと宣伝も難しいでしょうね…そういった伝記映画アルアルの、超・小規模公開でかつ前評判も…に陥ってますが、 熱い人間ドラマかつ、名演とフレッシュな魅力たっぷりの作品でした。スクリーンで観れて良かったです。
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