逃げるし恥だし役立たず

ベイビーわるきゅーれ 2ベイビーの逃げるし恥だし役立たずのレビュー・感想・評価

3.5
腕はいいものの社会に馴染めない二人の殺し屋女子と、彼女達の後釜を狙う殺し屋兄弟との対決を描く異色青春バイオレンスアクション。『ベイビーわるきゅーれ』の続編。
組織からの依頼で殺しを請け負っている杉本ちさと(髙石あかり)と深川まひろ(伊澤彩織)の二人は、教習所代金やジムの延滞金や保険のプラン変更などの重なる出費に悩み、何時もの様に途方に暮れていた。一方で、殺し屋協会アルバイトの神村ゆうり(岩永丞威)と神村まこと(濱田龍臣)兄弟もまた、上からの指令ミスでバイト代をもらえず、正社員ではないためどんなに働いたところで満足いく生活を送れるだけのお金は得られず、やはり途方に暮れていた。そんな中、神村兄弟は杉本ちさとと深川まひろのポストを奪えば正規のクルーに昇格できるという噂を耳にする。銀行強盗に巻き込まれたり、着ぐるみのバイトをしたりと、イマイチな生活を送る杉本ちさとと深川まひろに、二人のポストを狙う神村兄弟が迫りくる…
制作予算が増えたせいか日中のロケ撮影で映像が格段に明るくなり、制作日数は十二日に倍増、物語は前作とほぼ同構造ながら、杉本ちさと(髙石あかり)と深川まひろ(伊澤彩織)の主人公二人にマネージャー須佐野(飛永翼)や死体処理班の田坂(水石亜飛夢)たちのキャスティングも前作をしっかり継承しており、更には、助手の宮内茉奈(中井友望)、敵役に神村ゆうり(岩永丞威)と神村まこと(濱田龍臣)兄弟などの魅力的な新しいメンバーが登場する。ちさととまひろの殺し屋はつらいよ、神村兄弟の殺し屋残酷物語と謂った所だろう。
日常の緩い会話劇や脱力した遣り取りなどの何気ない日常描写は其の儘に、伊澤彩織の素手ゴロは迫力を増し、髙石あかりも転がりざまの銃撃戦など、より磨きのかかったのアクション、相変わらずハードなアクションとドラマ部分の緩急が見事で、プロットにツイストは殆ど無く、臆面もない演出だが、その分アクションに凄みが増して、面白さが収斂されている。
ただ、前作には無かったロケ撮影やエキストラにより、商店街の片隅での賭け将棋、着ぐるみでの格闘シーンなど素直に笑えるシーンはあるのだが、『花束みたいな恋をした(2021年)』や『溺れるナイフ(2016年)』についての言及は少々鼻について複雑な心持ちになった。
何とも憎めない岩永丞威と濱田龍臣のライバル二人組と主人公二人組との対比も新鮮で面白く、ラストでは折角の魅力的なキャラクターが勿体無く感じるのだが、殺し屋として物語の筋が通っており、青春映画のような清々しさが感じられる。正に此のストーリー展開は唯一無二であり、大資本による大量のVFXを投入しなくてもハリウッドと互角に闘える映画が作れることを教えてくれた、飽くなき映画への追及観に拍手を贈りたい。
好き嫌いや評価が分かれる作品であり、脱力した緩い日常の会話劇を何処まで許容できるかがポイントなのだが…其の会話劇も見方によっちゃあヌーヴェル・ヴァーグの尻尾先と捉えられなくもないのだが…