幽斎

スクリーム6の幽斎のレビュー・感想・評価

スクリーム6(2023年製作の映画)
4.2
恒例のシリーズ時系列
1996年 4.4 Scream スラッシャー・スリラーの原点
1997年 4.0 Scream 2 続編あるあるを地で行く路線
2000年 3.8 Scream 3 同じパターンでそりゃ飽きるよ
2011年 3.8 Scream 4 10年振りの同窓会
2015年 4.0 Scream: The TV Series 1 お笑い少な目
2016年 4.0 Scream: The TV Series 2 スリラー多目
2022年 4.2 Scream 前作、レビュー済
2023年 4.2 Scream 6 本作、ナンバリング復活。何で?(笑)
2025年 Scream 7 制作決定!12月から制作再開

「スクリーム」スリラーなのかホラーか?。新作が出る度に議論に為るけど、私はスラッシャー・スリラーと言う新ジャンルを確立した事に先ずは敬意を表したい。「SAW」との違いは過去のシリーズも巻き込んで茶化す事。AmazonPrimeで鑑賞。

暫く問わず語りにお付き合い願いたいが、定期的に京都在洛の洋画ファンと舌鼓を打ちながら座談会を開く機会が有り、各ジャンルの強者が参戦。私はミステリー、スリラー担当ですが、今回はホラー担当アラサー後半独身男性の駄弁りが止まらず大盛り上がり。彼はレビュー済「SMILE/スマイル」が劇場公開され無い事に強く憤慨、アメリカで劇場公開され全米№1まで獲得した作品が日本では配信スルーに、非常に危機感を憶えると。このままだと映画からホラーと言う文化まで衰退すると熱弁を振るうが、私も由々しき問題だと思う。本作「スクリーム6」も全世界1億7,000万$の興行収入、シリーズ最高の成績で全米№1でも配信スルー。因みにレビュー予定「死霊のはらわた ライジング」も然り。今のハリウッドは二極化が顕著で「トップガン マーヴェリック」「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」「バービー」メガヒットか、「シャザム!神々の怒り」「ザ・フラッシュ」一位だけど大爆死と両極端。私のジャンルで言えばレビュー済「LAMB/ラム」ミニシアターでも1億円以上売り上げた作品も有る。パンフレットを作らない作品も増えたとか、鱧料理で夜は深けて行くので有った(笑)。https://www.kyoto-manjiro.com/

「スクリーム」ご長寿の理由は色々有るが、最初の理由は1作目から完遂する「Stab」と言う世界観。シリアス一辺倒なホラーを、悉くお約束を破る事で先駆者をメタファーとして取り入れ、例えばセックスすると死ぬ、定番を覆すメタ構造は秀逸だった。2つ目は製作陣のフットワーク。1作目がウケた事を確認して「2」を製作。以下、同じ様に観客の反応を見て次の脚本を仕上げるので、完成するのは撮影のギリギリ前。つまり、続編アリきで制作しないので、スリラーの「Cliffhanger」は残さない。3つ目は統括者の存在。シリーズ・クリエーターのKevin Williamsonと、シリーズ・ディレクターWes Cravenのコンビ。彼らが目を光らせる事でシリーズの統一性は保たれた。

Cravenの死はシリーズ最大のピンチ、ハリウッドのセクハラ大王Harvey Weinsteinが権利を保有したが倒産。Jason Blumが買い叩く噂が流れたが、無事Kevin Williamsonがシリーズを引き継ぐ。ご長寿の理由の最後はキャストが全員仲が良くて続編にノリノリで有る事。女性陣は年齢的に言えば、日本の熟女AV(笑)皆さんお元気で何より。シリーズから離脱したキャストも簡単に帰る場所が有るのも、極めて珍しい。だが、本作に難題が持ち上がる。シリーズの顔Neve Campbell 49歳が「私のギャラは不当に安い!」駄々を捏ねる。ファミリー的な結束に罅が入るが、最年長Courteney Cox 59歳が「だったら彼女抜きで作りましょうよ!」自らプロデューサーに名乗りを上げ、呆気なくCampbell抜きでMTVムービー・アワード作品賞。次はシレッと戻って来るんじゃ?(笑)。

スリラーとホラーで曖昧な理由は「1」から不変の「Whodunit」。ホラーなら犯人は明らかで「ハロウィン」の様に殺しっぷりを堪能するが、スクリームは「誰が生き残るのか?」と「誰が犯人なのか?」サーカムスタンスが絶妙で、同じ事を繰り返してる様に見えて、作品毎にアップデートする事も忘れない未体験ゾーンへ。私は「ゴーストフェイス博物館」登場した時、ペプシをBRAVIAに吹きそうに(笑)。シベリア超特急顔負けの二段オチも健在。メタ構造を此処まで昇華出来るのは「スクリーム」だけ。

Courteney CoxとGhost faceの対決は、ハロウィン「マイケル・マイヤーズVSローリー・ストロード」匹敵する最大の見せ場である事は先刻ご承知だろうが、還暦手前とは思えない戦闘シーンに、家で気兼ねなく歌舞伎の様に「いよっ、待ってました!」大向こうも叫べる。アメリカの劇場も同じく「I've been waiting Cox !」歓声が飛んだらしい。リダイヤルで応戦したのはシビレたね。監督の個性を感じさせずクリエーターの色も出さない姿勢もシリーズ継続の秘訣。本作はラーメン二郎顔負けの背油と葫マシマシなボリューム感、オタクが過去の犯人を「実はアイツなんだよ」ファンサービス大感謝祭。アメリカの劇場も笑いの渦らしいが、笑えるスリラーって凄くない?(笑)。

【ネタバレ】過去作も遠慮なくネタバレするので、全て鑑賞してから観るべし【閲覧注意!】

私の周りでは「真犯人」全く分らなかったらしいが、序盤でしっかりヒントは有りましたよ?。Samara Weavingは贅沢な使い方で、ウェイティングが6作品も有ったので本人も寧ろ美味しかった?。冷蔵庫の死体を見た時「シリーズの掟破りの始まり」と感じた。Weavingはゴーストフェイスのルール通りに殺された。だが、犯人の一人であるグレッグの死体がバラバラだった事に物凄く違和感を感じた。真犯人はゴーストフェイスのルール「ホラー映画」セオリーから逸脱。しかも、短時間でバラバラ死体を処理する為には、真犯人はシリーズ初の2人以上の可能性も有る。

レガシーキャラでも死ぬ、主人公だって消耗品と繰り返すので、マクガフィンに惑わされてはイケないが、彼らの云う「コア4」は真犯人から除外。サムの彼氏は分かり易いミスリード、カービィはシリーズの掟から守られてるので、アレに引っ掛かる様では鍛錬が足りない(笑)。ゲイルはご覧頂いた通り、自ずと容疑者は序盤で絞られる。死んだ筈の誰かが生き返るのはシリーズのお約束、サムも言ってたよ「頭を狙う」と。流石に本作は生死のインフレ率が過去最悪、その辺りは次回作「7」に持ち越しかな。

ゴーストフェイスの殺し方にもヒントが隠されてる。死体をバラバラにするのはナイフでメッタ刺しで殺すと言うセオリーから脱線。梯子を揺らして転落死させたが、最大のポイントはマスクで顔を隠したままショットガンをブッ放すのはゴーストフェイスの美学から外れる。唐突に表れて殺すか、罠を仕掛けて待ち伏せするのが本来の姿。美学以外で殺すと成れば一番可能性が高いのは「復讐」。映画の中で「フランチャイズ」とヒントを与えてるので、過去に作られたシリーズから犯人が割り出せる。

ゴーストフェイス博物館も誰がどう考えても警察関係者しか出来ないコレクション。イーサンは、どの犯行現場でもアリバイが無いので、ミンディの推理は正解だが、共犯者が居ないと成立しない殺しの現場ばかりで「内通者」「ハッキリと生死が確認できてない」を考えれば、クイン、サムの免許証は彼女しか盗めない。までは劇場で十分推理出来る。真犯人が何故ゴーストフェイス博物館をセキュリティ・システムまで導入して資金的に維持出来るのか、私には分かりません(笑)。

首を傾げるのは生死の判定がいい加減なのは気にしないが、本作の真犯人は「3人」チョッと多過ぎない?。ミステリーの世界では共犯者が2人居る事は珍しくないが、本なら「アレ?」読み返せるから問題ないが、映画の様に一方的に情報が流れて行く場合、観客に推理する「余白」も必要でシリーズでも2人がお約束。片方が犯行に及んでも、もう片方がアリバイ工作をすれば捜査の網を掻い潜れる。犯人のインフレは際限が無いので、アベンジャーズの様に「やめられない、とまらない」かっぱえびせんに陥る危険も有る。Williamsonは脚本も務めてるので、次の一手に期待したい。

本作は「1」から受け継がれる、血で呪われた忌まわしい過去を刷新する、ブレないテーマも秀逸。連帯できるサムの家族、歪んだ愛情の真犯人の家族と言う対比も分かり易くて良い。私も人を殺すだけのホラーなら見ない。おバカ映画に見えて、地に足を付けるプリンシパルが有る以上、シリーズは続くだろう。続編「7」既に制作決定。Coxが5本の監督経験も有るの候補らしいけど、果たして?

「童貞のまま死ね!」Neve Campbell 不在を乗り切ったJenna Ortegaに拍手を(笑)。

【終決!】2023年11月9日 14:30
7月から行われた米俳優組合SAG-AFTRAのストライキが、118日間で終了する事になった。映画会社、テレビ局、配信業など350社が所属する業界団体Alliance of Motion Picture and Television Producersから提示された新契約に暫定合意。過去40年で最大の最低賃金増額、ストリーミングプログラムに対する新たな再使用料、人工知能の使用に関する広範な補償が盛り込まれる。配信サービスの再使用料や人工知能からの保護をめぐり数回に渡り紛糾状態のハリウッドに安堵感が広がってる。待機作品は12月から順次再開される見通し。先ずはホッとした、いい誕生祝いが来た(笑)。
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