Eryyy678

君たちはどう生きるかのEryyy678のネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

世界が暴走してしまうのは、世界に生きる一人一人が、考えることをやめたから。あるいは、最初から考えることすらない。
なぜ私達が人間であり、この世界に生きているのか考えること。思考、あるいは心か。この授かり物の素晴らしさに気付かぬまま人生を送ることは、あまりに惜しい。

そして人間の「知」の産物とは、書物。

書物は人々に希望を与えます。
そして絶望も。

主人公が感じ取ったのは前者かもしれませんが、大叔父はおそらく、後者に呑まれていったのかもしれません。

だから、よりよい世界を作ろうとした。
しかし世界が、創造主の思い通りにならないように、全てが人間の悪意の中に飲み込まれることがある。
そしてあらゆる「知」が頭の中に詰まっていても、積み木の立て方は、わからないのです。
他の誰にだって、わかりはしないでしょう。

主人公が現実世界に戻る選択肢をとったことは、感動します。彼はあの本の続きを読まなければなりません。あの本に涙出来る彼ならば、現実世界で何かを変えることが出来るかもしれない。変えることが出来なくても、考え続けることは出来る。

ところであの本にも「叔父さん」なる博識で聡明な人物が出てきますが、この映画の大叔父と彼を、どこか重ねてしまいます。

世界が壊れ続けることは、きっともう止められないけど、地獄を、ほんの少しだけましな地獄にすることが出来るかもしれない。
考えることをやめた時、その時こそ人間は、世界を神に返上しなければならないのでしょう。

どう生きるか、とは。どう感じるか。その一瞬一瞬に、何を考えるか。そしてその時考えたことは、紛れもなくその人自身のもの。そして私達は常々「どう生きるか」ということを、自分自身に問い続けねばならない。
痛みと絶望の中から、それでも問い続けなければならない。
Eryyy678

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