質量保存の法則をテーマとするストーリー自体は、決して嫌いではない。思考停止の不気味さや、豚に壁ぶちかまし、聖母懐胎など、奇天烈なシーン群。ホラーというよりは、社会派不条理コメディのテイストで嫌いではない。オンとオフを使い分ける展開は、ホラー苦手派にも優しい親切設計(そこがヌルいとも言える)。
この奇天烈世界要素で突っ走れば、傑作にも、逆に⭐︎×1の愛すべきトンデモ作にもなりえたはずだが、予告から想定しうる範囲内でしか展開しないところが勿体無い(予告が出来すぎ)。特に中後半で2度、重要な夢・妄想シーンがあるが、ここのぶっ飛び度合いは半端ないのだから、夢や妄想にしないで現実にするべきだった。ほかの珍妙なシーンも意味不明なのだから、自ら打ち消す意味はない。
ホラーに合うとしか言いようのない古川琴音は、期待に違わない好演。演技の幅が広がったという意味で、彼女の今後に期待したい。