藻尾井逞育

ミステリと言う勿れの藻尾井逞育のレビュー・感想・評価

ミステリと言う勿れ(2023年製作の映画)
4.0
「子供って乾く前のセメントみたいなんです」
「子供はバカじゃないです。自分が子供の頃バカでしたか?」
「どうして女性の幸せを決めつけるんだろう」
「“女の幸せ”とかにもだまされちゃダメです」
「人は弱くて、壊れやすくて、倒れることもある。それが当たり前だと誰もが思えたらいい」

広島を訪れた久能整が、代々、遺産を巡る争いで死者さえ出るといういわく付きの名家・狩集家の遺産相続事件に巻き込まれていく。

原作・ドラマ未視聴、予備知識ゼロです。どんな映画でもそうですが、その映画の世界観とか登場人物の魅力などをうまく捉えることができるかどうかでその映画にハマれるかが決まってきます。特にドラマからの映画は初見の人とコアなファンとの温度差が大きく、ファンの方にとってのお約束ごとにうまくのれるかが重要となります。この映画は、話の展開がリズムよく、主人公の久能整クンに扮した菅田将暉さんの魅力的な演技で、結構最初の方から私は持っていかれました⁈私自身が横溝ミステリーのファンであったことでうまくのれたのかもしれません。旧家の遺産相続、開かずの土蔵、座敷牢、血錆びの刀、怪しげな日本人形、真贋入り混じる陶器…と横溝金田一ファン垂涎のアイコンが散りばめられています。主人公の整クンも、もじゃもじゃ頭で妙に明晰だけど優しさと温かみがあり、なかなかいいコトを言う言葉の端々に名探偵金田一耕助のイメージを見てとることができました。映画でも「犬神家の一族⁈」っておもいっきり潔くネタバレしてましたが、一族集まって遺言書を読み上げるシーンは「犬神家の一族」の構図まさにそのままでしたね。でも遺言執行者であるはずの弁護士と会計士の方が上座にいることに違和感を感じていたら…。最後の駅での別れのシーンは、金田一版ならおもいっきり旅情豊かに演じていたところを、整クンが面倒くさそうにしていたのは現代風だなぁ、って思いながらエンドクレジットを見ていました。すると、◯◯さんや××さんの名前が⁈そういえば冒頭登場した瑛人クンてなんだったっけ?と思っていると最後の最後に思わせぶりな演出。ドラマの本隊が参加すると予想される次回作があるとしたら、今度は私もコアなファンの方たちと一緒に最初からのっていけそうです。