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怪物のjunko24のレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.2
小学五年生という、思春期に傾き始めた2人の少年たちがとてもみずみずしく、そしてとても繊細に描かれていました

一人息子みなとが
たびたびいつもと違う様子を見せるので
シングルマザーの母は
心配のあまりみなとを問い詰める
誰かに暴力を振るわれたんじゃないのか
いじめられてるいるのではないかと
その問いに対する みなと少年の答えは
周りを意図せぬ方向に巻き込んでいく


以下ネタバレ含みます




同じ時間 同じ場所 同じ空間
起こった出来事はひとつなのに

母の視点 担任教師の視点 こどもたちの視点

ひとつの物事が多面的に描かれたことで
視点を変えると全く違う事実があり
人の感情や情報がいかに曖昧か…
いま一度、投げかけられた気がしました


それぞれその時にどう受け止め
どう行動をおこしたのか
そしてそれは一体どういう事だったのか
まるで謎解きのように話は進んでいきます

本当に見事に構成された脚本で
ロケーションも素晴らしく
あのこわいほど高台の校舎やベランダからみる景色は足場を不安に思うほどで
そこがまた少しなんとも言えない不安定な印象を
映像に与えている気がします


是枝監督がこどもを撮ると本当に生き生きとして
魅力を最大に引き出しているといつも思います

安藤さくらさんはいつ見ても見事に役になりきっていて、ずっと前からみなとの母のようでした
学校へ行き、校長先生に詰め寄る場面は母の思いがひしひしと伝わって胸が痛かった

特に坂本裕二さんに当て書きされた瑛太さんは
角度を変えてみた時に、受け止め方が全く異なるような絶妙な演技をされていて、見た後に思い出しながらすごいなと

そして校長役の田中裕子さん
なんとも言えない存在感で
作品にインパクトを与えてる感じ
ある意味1番怪物っぽいかも…

ラストに優しく包み込むように流れる
坂本龍一さんの音楽が美しくて
静かに余韻に浸らせてくれました

そして、思い出すにつれ
あのラストはまるで夢の中の出来事のように思え
土砂崩れにあい横倒しになった列車の中
彼らはどうなっていたのか

誰にも言えない思いを抱えて生きている人々
そんな言葉に出来ない思いが
そこはかとなく
ミステリのような
映画に緊張感を与えている気がして
いろいろと考えを巡らせてしまう映画でした





坂本龍一さんのご冥福を心よりお祈りいたします

そして

第76回カンヌ国際映画祭
コンペティション部門「脚本賞」
「クィア・パルム賞」
受賞おめでとうございます!
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