みんな幸せでいてほしい。
少年たちが窮屈さなど感じず、ありのままでいられたら。
子供の狭い世界。大人の狭い世界。
建前。忖度。犠牲。
現実に生きていれば嫌ほど目にするものをまざまざと見せつけられ、酷く落ち込む。
先日のカンヌでの是枝監督の「LGBTQに特化した作品ではない」という発言を踏まえて観たが、やはりその言葉は飲み込めるものではなかった。
彼らの苦しみや望んだものを真っ向から捉えるなら、「特化していない」などと言ってしまうことは逃げに値しないだろうか。
誰しもが抱え得るものだと言うのは、果たして適切だろうか。自分にはそうは思えない。
黒川想矢と柊木陽太。
この2人の子役の素晴らしい演技が、この映画をより鮮明なものにしていた。
だからこそ先の監督の発言には不誠実さを感じてしまう。
芸術は、良くも悪くも“美しさ”で問題を覆ってしまうことがある、というのもこの映画を通して改めて感じた。
繊細な時期を過ごしている子供たちが、大人のために利用ないし消費されずに、しっかり守られる世界であってほしい。
キャスティングや構成、音楽、この映画を作り上げる要素は完璧に等しいほど揃っていただけに、モヤモヤとした部分がより浮き彫りになって残っている。