ゆり

ゴジラ-1.0のゆりのネタバレレビュー・内容・結末

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

ゴジラの恐ろしさを描くというよりは、ヒューマンドラマが主体の作品だった。
ゴジラの恐ろしさの表現でいくと、『シン・ゴジラ』のほうが際立つよう表現されていた。例えば冒頭、初代『ゴジラ』ではゴジラ登場までがかなり引っ張られ、映画開始から30分経過したとかろでの登場だった。
本作ではゴジラが観客にとって周知の存在であるということからか、ゴジラの登場シーンや名前の公開はとてもアッサリしたもので、その登場のひょっこり感がある意味拍子抜けだった。
エフェクトの凄さ、VFXの凄さがよく言われておりゴジラの怖さを味わう作品だと思っていたから、そのように感じたのだと思う。
しかし、観ていくとこれはゴジラの恐怖を味わわせる作品なのではなく、主人公自身の恐怖と葛藤、そしてそれを乗り越えていく、1人の人間の成長物語にフォーカスした作品なのだなと理解した。
ゴジラの恐怖をどう描いていくのだろう、と観ていたが、これは「主人公が感じるゴジラ・戦争に対する恐怖」を描くことに力を入れていたようだった。


俳優陣の演技は流石で、子役に至るまでわざとらしさを感じることなくしっかりと作品の世界観に馴染んでいた。
だからこそ、実写作品としての空気感や人間の感情の生々しさが際立ち、実写合成で作る良さがきちんと表れていた。
「アルキメデスの大戦』や『ALWAYS 三丁目の夕日』でも感じたが、山﨑監督は人間の心情を描くのが上手いと思う。
最後のハッピーエンドな展開もワザとらしくはあるものの、主人公の苦しみがそれまででよく伝わってきていたからこそ、素直に「良かったね」と思えた。

でもだからこそ、一部VFXのワザとらしさ、撮り方については惜しさを感じてしまった。『鎌倉物語』や『寄生獣』、『ゴーストブック』のように、山﨑監督の作品は割とVFXを目立たせた、あえてワザとらしさを残した作品が多いように考えている。今回に関してもそれがあったのかなと。
また、彩度の高い画作りも特徴の一つかなと思っている。『鎌倉物語』や『ゴーストブック』ではそれが登場するファンタジーのキャラクターや世界観にマッチしており良いと思ったが、例えば本作での浜辺美波役の女性が電車に乗っていて落ちそうになるショット。あそこではもっと彩度を落とした方が深刻さが出たのではないかなと思った。最後の作戦中の船に乗っている人達(3人組)についても、変に肌の色味が目立ちすぎているように感じた。

また、カメラワークについても、例えば本作では主人公の恐怖感にフォーカスしていたが、それであれば冒頭の、主人公とゴジラの初対峙の時にもっと主人公の主観での画があってよかったのではないかはと思った。そのほうが観客もより主人公の味わっている恐怖感を一体となって感じられたのではないだろうか。

ただ、最後のゴジラとヘリのやり合いに関してはゴジラのアトラクションの監修をしただけはあるなと思うような、臨場感のあるカメラワーク、アニメーションになっていたと思った。

VFXに関しては、エフェクトが凄いと聞いていたためどんな感じかと思っていたが、水回りのエフェクトはとても良いと感じた。エフェクトについては専門外のため完全なる素人意見だが、前に新作アバターの水のエフェクトが凄いと言われていたが、それと比較しても然程遜色ないように感じた。そのくらいリアルで迫力のあるエフェクトだった。
しかし勿論全カットのエフェクト、コンポが良かったかと言われるとそうは言えず、「良いカットもあった」という状態だった。日本で、低予算で、かつあの人の少なさを考えると、それだけでも、そして全体的にもとんでもなく凄いことだと思う。
ゆり

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