幽斎

死の約束の幽斎のレビュー・感想・評価

死の約束(2020年製作の映画)
3.8
C級スリラー(ホラー)をレビューする、Scavengerシリーズ第15界。原題「Waidmannsdank」オーストリア系ドイツ語。私はドイツ語はサッパリ分らないので、アメリカ英語に直すと「Good Hunting」ソレが何を意味するのか?。スカベンジャーも稀に当たりが出ます(笑)。AmazonPrimeVideoで0円鑑賞。

2020年に製作されたオーストリア産TVムービーだが、ザルツブルクの映画祭で受賞した佳作ミステリー(スリラーではない)。ソレもその筈で原作がオーストリアを代表する歴史家で女性作家Alexandra Bleyerの原作「Waidmannsdank」映像化。日本でもペーパーバックが購入可能。表紙のデザインが鹿の巨大な角を持つ剥製、既にフラグが発生。

オーストリアの犯罪小説の多くは、舞台がド田舎で登場人物もシカメッ面で不機嫌。日本語で言う「陰気」な作品、エンタメ感が皆無で、ミステリーのロジックも理詰めと言うよりも人間関係に比重を置くので、読後の爽快感も乏しい。世界三大映画祭が開催される国なのに、気質が同じドイツがヒットに恵まれない理由と重なる。

携帯が繋がらないとかドンだけ田舎なんだよと思われるだろうが、EU諸国では普通に在る事で日本の様に津津浦浦まで繋がる国の方が珍しい。山奥を舞台にするのは、閉鎖的な環境なら人のエゴとか影の部分が可視化され易いから。連なる山の雄大な風景は癒しになるが、人々の会話は陰気でドンヨリ感に包まれる。地元民にはソレがウケるのだろうが、もう少し物語がハネても良い気もする。

何時ものオーストリア産ミステリーの様に、殺人事件が冒頭だけでジャンプスケア無し、と言う訳では無く原作が佳作なので心配ご無用。更なる脅迫状、襲撃事件、第二第三のホニャララ等。オーストリアの犯罪小説で銃を用いる事と恋愛模様を描くのは珍しく、原作と同じく鹿の剥製が登場するが、観客の期待にキッチリ応えてくれる(笑)。

オーストリアは相変わらず年増おばちゃんデカも登場←(言い方よ(笑)。プロットは産まれ住んだ田舎に留まりたい派、田舎を脱出して都会(嫌いな言い方)行きたい派の対立構造。私の住む京都市は政令指定都市で最も人口流失が少ない。しかし、ホテルの乱立で税金と家賃が急高騰、公立住宅も建てられず、流失に歯止めも掛からず財政再建団体に転落する危機。市の失政は明らかだが、住めば都も大変だと思う京この頃(笑)。

オーストリア産なので派手なトリック、冒頭に伏線が有る等の気構えは一切不要。明かされる結末も衝撃の事実より、複雑に入り組んだ人間模様に軸足を置いた展開なので、地道な捜査が実を結ぶ事を共に楽しむスタイリング。京都人が村八分を批判するのはお門違いかもしれないが(笑)、住んでる人が全て顔見知りと言うのは、息が詰まると思うがソレこそ京都と同じじゃないかと事件を見乍ら他人事でも無い気もした。

映画祭受賞のオーストリア俳優の演技は一見の価値あり、お暇なら暇潰しに為るかも。
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